カテゴリ:読書メモ
長いあいだ私は読みたく思っていても果たせなかったのだった。
恐れおおいが、この有名な書き出しをパクってしまった。 やっと読み始めた。それも3冊にまとめてある抄訳版の一冊目を何とか読み終わったのである。 なるほど、 プルースト研究者でもある訳者鈴木道彦氏のあらすじがほどよく、解説もすばらしい。本文の挿入もさすがに、ここぞというところが選んである。 それでもこの小説は、その挿入の短い本文でさえ、なんと読みでがあることか。 むしろ、あらすじを追っての物語展開は複雑で興味が尽きない。この紺膨大な小説はあらすじを把握して細部を楽しむのがいいのだろう。と思われた鈴木道彦氏は明察の人である。 この小説の、名もなき語り手が語る心の動き、繊細で詳細に綴ってあり、さらに比喩を用いて説明してくれるのだが、その例に挙げてあるたとえがまどろっこしい、めんどくさい。眠りにつく際の描写や景色の見方の克明さ、音楽や絵画についての考察は微に入り細をうがち「もういい!」というぐらい。もちろん文学についてはもっと真剣だ。 そう、小説家になりたい語り手の使命感を解き明かしているのだが、本筋がどれで、たとえがこれでと、よーく見極めないと何が何やらわからなくなってしまうのだが。 「美しい作品がそれまでに読んだ美しい作品を基準にするのではなく、固有の美である」と作家道を説かれると(集英社文庫・抄訳版、344P)やはりこれは文学について真実を語っていて、それをおもしろがる向きにはもってこいだ。 と、「抄訳版の1」を読んだだけなのに目が離せない作品である。しかし、抄訳版2、3と読み進むのもしんどいのに、まして、これを機会に完訳版をどうぞと鈴木氏、手を出せるかどうか・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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