時間の陥穽378
イギリスの理論物理学者でエディンバラ大学名誉教授のピーター・ウェア・ヒッグス(Peter Ware Higgs/ 1929年5月29日 - )博士から名付けられたヒッグス粒子、ヒッグス自身は「so-called Higgs boson(いわゆる ヒッグス粒子と呼ばれているもの)」と呼んでおり、その通り他にも様々な呼称で表されています。先ず、ベンジャミン・W・リーらによって「ヒッグス粒子」と命名された経緯があります。その後、レオン・レーダーマンらの著書「The God Particle(神がつくった究極の素粒子)の書名が元となって「God particle(神の粒子)」という呼称でマスメディアに紹介されるようになります。ただし、この著書の中では、レーダーマン自身はこの粒子を 「goddamn particle(いまいましい粒子)」という呼称で紹介しようとしていたそうですが、編集者の意向で却下され、いまいましさを感じさせています。ところが、「神の粒子」という呼称は、素粒子物理学やLHCについてジャーナリストらに興味もたせるのには役に立ったようで、マスコミは「神の粒子(God particle)」の呼称を採用します。然し乍ら、実勢的には多くの物理学者は「神の粒子(God particle)」の呼称に批判的です。確かに、此の「神の粒子」という異名には、レーダーマンが自著で語った、この粒子が特別に重要だとする主張が込められてはいるが、実際的には、たとえ此のヒッグス粒子・神の粒子と称されるものが見つかったとしてもそれは量子色力学、電弱相互作用と重力の統一理論の解答にはならないし、将又、宇宙の究極の起源について解答を与えてくれるものでもなく、物理学的に見て究極のものとしては左程のものでもない。更には、ピーター・ヒッグス自身も、インタビューされた時には、この「神の粒子」という呼称は避けたいと述べたという事実もあります。此の「神の粒子(God particle)」呼称は宗教関係への挑戦になるのでは懸念から出た発言なのでしょう。
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