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テーマ:試写会で観た映画の感想(678)
カテゴリ:邦画(た行・な行)
原題: Nobody to watch over me 監督 : 君塚良一 出演 : 佐藤浩市 、 志田未来 、 柳葉敏郎 、 石田ゆり子 、 佐々木蔵之介 、 佐野史郎 、 木村佳乃 公式サイトはこちら。 <Story> 幼い姉妹の殺害事件で未成年の容疑者が逮捕される。 その瞬間から容疑者の家族は、マスコミや世間の目を避けるため警察の保護下に置かれ、 中学生の妹・船村沙織(志田未来)の担当は刑事の勝浦(佐藤浩市)に任される。 ホテルや自宅アパート、友人のマンションを転々とするが、 マスコミの執拗な追跡に行き場を無くした勝浦は、かつて担当した事件の被害者家族が営む伊豆のペンションに身を寄せる。 そこへ沙織のボーイフレンド(冨浦智嗣)が駆けつける。 誰も守ってくれない - goo 映画 <感想> 第32回モントリオール世界映画祭最優秀脚本賞受賞作品。 もともと佐藤浩市さんが好きなので、この作品も非常に興味ありました。 シネコン試写に行ってきました。
君塚良一さんといいますと、『踊る大捜査線』シリーズ(私、これってTVも映画も全く未見なんです)なのでしょうけど、 自分にとってはTBSの「ずっとあなたが好きだった」なんですよね。 なのでここでも佐野さんが冬彦キャラで登場しているのが笑えたり。 観始めは、音声はLIBERAの曲のみの中、物語のイントロダクションが流れていく。 ただし、この被害者の家の前でのシーンは、これは明らかに警察の失態を表しているといいますか・・・。 普通であれば未成年の犯罪者の家の前からTV中継が行われることはほとんど見たことがないだけに、それが堂々とまかり通っているのは、話としておかしいような。 ですがこうすることによって細々と説明するよりも事態の重さが伝わる。そして沙織が明から暗へ誘導されていくコントラストも痛々しく。 職命として加害者家族の保護を命ぜられた勝浦は、初めこそ疑念を抱くが、 家族には罪はない、という認識のもとに沙織を守っていく。 犯罪被害者家族の心のケアに焦点が当てられているのは既知のことですが、 加害者家族の保護について、ほとんど実情を知らないのが正直なところです。 加害者家族は糾弾されて当然という世間一般の見方からすれば、 警察がそれをして一体どうなるという声もあって然るべき。 ですが、突然家族が犯罪に巻き込まれたという話では、 被害者側も加害者側も、同じなのかもしれません。 加害者に関わるものなのだから、同じように罪を償え、と言いやすい風潮の前に、 何も知らずにいきなり渦中に巻き込まれた加害者家族が、 罪の意識に苛まれて精神的に追い詰められたり、 自殺してしまったりという痛ましい出来事があるのも事実です。 そのような現実から加害者家族を守らないといけない、という動きがある一方で、 逆に被害者からすれば、加害者関係者への憎しみは消えることはないのだから、 それは理解できない、と反論もあるのが当然というもの。
ネットの功罪の「罪」の部分も、この映画では容赦なくクローズアップしていました。 ひとたび騒ぎが起きると祭り上げ、そして別の騒ぎが起きるとそちらに流れていく。 それを取り締まる術がほとんどないだけに、 ネット上だけでなくリアルでも拡大していく被害。 常に何か攻撃すべき対象を漁っているかのような 攻撃すべき対象に対しては過剰なまでに自身の論理を押し付ける、 暗い目をした佐々木蔵之介の表情。 己の愛する者が痛めつけられている復讐を、沙織や勝浦のような存在にぶつけているかのような設定に、歪んだ心の構造を感じる。 そして、ネットを介した卑劣な仕打ちが、 心を寄せていた人たちからの無残な裏切りを倍増させていく。 同じ悲しさでも、単に心と心で解決できる問題ではなく、 言いようのない憤りと傷を残していくのも、ネットの「罪」。 テーマ的には重く、また描き方もリアル。 沙織は、単に自分に浴びせられる容赦ない攻撃から逃げられればいいというわけではなく、 その胸に去来するものを次第にストーリーの中で明らかにしていく。 それは家族や友人への思いやりであったり、愛情であったり。 突然何もかもが変わってしまって、その胸の内を表せない苦しさと共に、 変わることのない、愛する人への想いを表していた。 そして本庄夫妻の慟哭もまた、被害者側からの偽らざる声を代弁している。 彼らにとっての、犯罪加害者関係者への思惑が変化していく過程も、 切ないですが、この映画の結末としては胸を打つものがありました。 勝浦にとっての、沙織にとっての、本庄夫妻にとっての、家族とは何か。 観客である私たちにとっての家族って何なのか。 突きつけられる作品でした。
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