夕日を見ながら思った。
何となく、薄暗く、薄汚くなっている部屋に泊まるのも、たまには悪くない。
チカチカと光る気だるさが好きです。飲みすぎて疲れすぎて、ボックスに座って、眠そうにする姿。このまま倒れてしまいてえという破壊的な状況。音楽がガンガン鳴って。みんなが元気に踊って、一人疲れて倒れてしまっている腑抜けな状況が割と好きです。
夕日を見ながら思った。
全然関係ないが、昔、ネパールのダンプスというトレッキングの入り口の村で、風景を見ていた。遠く、10キロぐらい離れた谷からダンプカーの音がこだまする。その音が、その谷の向こうに見える5、6000メートル級の山々の頂上付近が急勾配なので、雪が煙になって、風の方向に何百メートルも舞っていくのが見えるのだが、ダンプカーのエンジン音がその雪煙の音に聞こえるのであった。しかし、しばらく眺めていると、地球の自転の音に聞こえるのだ。地球が丸いと分かるぐらいの距離まで離れて俯瞰しているような感覚に襲われる。何せ1日1回転だ。つまり、時速2400キロで地球は回っているのである。その回転音を想像してしまうのである。
夕日を見ながら思った。
同僚の子供が、今日のニュースで、きこちゃんの子供ふぁっけ、1歳になって、ニュースになっていたのを見て「この子供えらいの?」と質問があった、といっていた。どう答えたらいいものか。
「別に、偉くはないけれど、世の中は生まれながらに差別があるからね、身分があるからね」なんていうと、差別や身分の説明をしなければならないからね。
夕日を見ながら思った。
最近、海外旅行をしてきたので、海外のことばかり書いていたのだが(というか、サンフランのことはちょとだけで、ほとんどタイのことだったのだが)、日本は国境を海に面しているので、言い方が海外であるが、そのために、外国は、特別な場所という意識がある。そう簡単には行けず、ハレの場である。
だから、例えば、ハルジさんはカナダに住んでいるのに、毎日アメリカの会社に通勤しており、毎日国境を行き来しているというのは、何とも日本的感覚からすれば不思議だ。でもヨーロッパじゃあ、少し物価が安いというだけで、隣の国に住んだりするし、ミックジャガーなんかも、確か、税金のないリヒテンシュタイン国籍になってるんじゃなかったっけ?
夕日を見ながら思った。
それにしても、海に囲まれているおかげで、国を意識しない国民であり、イスラエルやクルドみたいに、心の中の国家というのはないのだなあ。
夕日を見ながら思った。
死ぬまで、死なないのだから、考えても仕方ないなと。
夕日を見ながら思った。
感動装置だなあ。
夕日を見ながら少し、何も思わなくなった。
夕日を見ながらだんだん何も思わなくなった。
夕日を見ながら全く何も思わなくなった。
夕日を落ちて思った。
今夜はこれを食べようと。