カテゴリ:アート
今年は何故か河鍋暁斎づいている。初詣の成田での展 覧会。そこで今回の京都での展覧会を知る。先月は、 美の巨人たちで紹介された暁斎の蛙のお墓を谷中まで 探しに行った。 暁斎は、昔、江戸博で見た覚えがあるのだが、数年前 の東京ステーションギャラリーでの展覧会は鮮明な記 憶がある。閻魔大王や妖怪引幕妖怪引き幕に圧倒され た。地獄太夫の艶やかさと一休禅師のとぼけ顔のギャ ップが忘れられない。(今回も展示されている作品。) 昨日の先日の新日曜美術館でも、あの檀ふみさんが、 暁斎のことは知らなかったと言っていたし、私もずっ と「ぎょうさい」だと思っていた。「きょうさい」と知 ったのは、今年、成田に行った時である。狂斎を暁斎 と改めたのである。 先週のオフ会でPandaさんにチケットを頂き、京都へ の日帰り旅行を決めた。永徳や若冲の時は、気力が沸 かなかったのだが、この職場も2年目となって、ずい ぶん余裕が出てきたのを感じる。 さて、東京発7時。京都に向かう新幹線の中で読み始 めた北森鴻の「狐罠」。宇佐美陶子が尋ねたプロフェッ サーDの研究室に掛かっていたのが、暁斎の絵だった。 そんな偶然に、ワクワクしながら、京都に到着。9時 20分。駅前広場は人の波。ちょうど東福寺へ行くバ スが来て、一目散に京博へ向かった。 京博に着くと、黄色い派手な暁斎展の看板。キャッチ コピーは「泣きたくなるほど、おもしろい。」遊行さん も書かれているが、まさにこの言葉のとおりの展覧会 であった。 ほかのコピーは、「絵画の冒険者」「近代へ架ける橋」。 美術史をちょっとかじるとこれらのコピーの意味が分 ってくるが、小難しいことを考えずとも、十分に見応 えがある。 今回、楽しみにしていたのはアンダーグラウンドの類 の絵。幽霊、地獄、極楽、九相図・・・。潜在的にこ ういう絵が好きなのだ。 まだ小学校入学前にどこかのデパートの展覧会で地獄 図を見た時、本当に地獄に落ちるのは恐いと思った。 その時は今後、絶対に悪いことはしないと誓ったのだ が・・・それ以来、地獄の絵には愛着を感じている。 今回出展されていた地獄絵は、閻魔大王も鬼たちも、 どこかのんびりとした風情のものが多い。巨大画面の 地獄極楽図もギョロ目の閻魔大王は、恐ろしさよりユ ニークさを感じた。 静嘉堂文庫にあるという「地獄極楽めぐり図」は、暁 斎の知り合いの「たつ」という14歳の少女の供養の ために描いた画帖。これが楽しみであった。三途の川 で水子たちにおもちゃを配る「たつ」が描かれている。 親はこの絵を見てたいそう喜んだことだろう。暁斎の 心優しさにジンとくる作品である。話題になっている 極楽の機関車が描かれている作品は後期出展のために 観ることができなかったのが残念であった。 福富太郎コレクションの幽霊図。これは恐い。顔の半 分に光が当たり、双方の目の光る色が異なっている。 そのほか、生首をくわえて飛ぶ幽霊とか、血の滴る生 首を下げながら反対の手で髪の毛を引っ張り振りかえ る幽霊なんて凄まじい怨念だ。 もうひとつ、処刑場跡描絵羽織という凄惨な光景が描 かれた羽織があった。図録を見ると表は、涼しげな生 地の黒の格調高い羽織なのだが、会場に展示されてい る裏地には・・・当時は、こんな光景はけっこう間近 にあったのだろう。幼い時に川に流れてきた生首を持 ち帰って写生したという暁斎の真骨頂。 聖と俗、美と醜、現実と空想、そんな相反するものを 自由自在に画題に取り入れる暁斎の魅力に圧倒された。 2時間半近く、休みも取らずにずっと見入っていたの で、さすがに腰が痛かった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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