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カテゴリ:読む愉しみ
「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」 と言ったのは、林芙美子でしたが、 ほんとうに・・・ 花の命は短くて・・・ 「満開です!」と、お知らせしたあとすぐに、市内の桜は、雨とともにおおかたの花を 落としてしまいました。 街のあちらこちらが桜色に染まって、ちょっと華やいだ気分になったのもつかの間。 ほんとうに、はかないいのち。 だから、 だからお花見の時季は、落ち着かないのですよねえ。
関東のさくらは、すっかり終わってしまいましたが、 でも、 桜前線北上中。 東北や北海道のさくらは、これからですねえ 今年の冬は特に雪が多かったので、春の訪れをどんなにか待ち焦がれていたことでしょう。 北国にお住まいの皆さん、さあ、待ちに待った春ですよ~
ところで、 さくら舞い散る季節になると、思い出す詩が何篇かあります。 昨年のこの季節のブログ「生はいとしき蜃気楼」に書いた、茨木のり子の「さくら」もそうですが 金子光晴が孫の若葉さんへの愛情を綴った、この詩もまた、さくらの花びらとともに ふんわり舞いおりてきます。 といっても、憶えているのはこの短いフレーズだけなのですが。 うば車を押しながらそっと祈る。 雨風よ。若葉をよけてゆけ。
「雨風よ 若葉をよけてゆけ」 だなんて・・・ 胸キュンですよねえ。。。 小さな命をいつくしむ祖父のまなざし、 愛しい孫のうば車を押しながら、目を細めて微笑む祖父のまなざしが、 あたたかいですねえ
さて、では、この詩の全文をご紹介いたします。
詩集『若葉のうた』から
さくらふぶき 金子光晴
夢でみた若葉は、さくらふぶきのなかに、花嫁の振り袖すがたで立っていたが 顔をのぞくと、やっと立ちあがる、まだあかん坊のままの顔だ。
あたりはしづかで、もの哀しいことしの春のかはたれどき しあはせなんだねとたづねると、娘らしくその顔を袖にかくしてはにかんだ。
パパやママが若葉のしあはせを見送るさびしさの、その日はいつの先のこと、 その日にあへるすべもない祖父は、うば車を押しながらそっと祈る。 雨風よ。若葉をよけてゆけ。
うば車がしづかにうごくと、若葉は、まぶたを閉ぢる。 そのまぶたのうへに、一もとのうこんざくらが、とめどもなしに散りかかる。
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Last updated
2012年04月22日 21時58分03秒
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