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カテゴリ:蒼鬼
だが、相応はぎらりと光る一瞥で良房を制すと、一際大きな激しい声で真言を唱えた。そして、何を思ったのか突然太い腕を振り上げると、やにわに明子へ向かって手に持っていた念珠を投げつけた。
明子の身体に当たった数珠玉は糸が切れて、岩に砕かれたように八方へ飛び散る。明子への乱暴に、良房は満面を怒りに染めて立ち上がった。 だが、その時だ。 悲鳴を上げて簀子へうずくまった明子の背から、何やら蒼い炎のようなものが立ちのぼってきた。それは見る間に明子の身体から染み出し、辺りを青白い光で染める。という間もなく、その蒼い光は巨大な青黒い影へと姿を変えた。 それは、あの鬼だった。 鬼は明子の背後で頭を押さえてうずくまり、吼えるようなうめき声を上げながらのたうっている。相応はしめたとばかりに一際高く真言を唱えると、鬼に向かって叫んだ。 「紀僧正真済! 后から離れて、今すぐこの染殿を去れ!」 鬼は伏せていた顔を上げ、呆然と相応を見つめていた。 「真済……」 良房はようやくそう呟いただけだった。基経は眉間にしわを寄せたまま黙っている。相応はひたと鬼に視線を当てたまま微動だにしない。その毅然とした迫力に、真済の鬼は俄かに身動きも出来ないようだった。 だが、やがて鬼は気を取り戻すと、唸り声を上げて相応に飛び掛ろうとした。しかし、相応の周りには結界でも張られているのか、鬼は相応に触れることも出来ずに、逆に遠くまで弾き飛ばされてしまった。 ↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年05月28日 15時29分34秒
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