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カテゴリ:実践!企業価値評価
1日1分!企業分析 本日の日経注目企業の分析 ~富士通~ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■注目した記事(4/30 1面) LSI生産 富士通、開発でも協力へ 先端品、台湾社に委託 ■記事への素朴な疑問 今回のシステムLSIへの投資では、数千億円規模が必要になり、 回収が困難と判断したため、外部の生産能力を活用するそうです。 NECエレ・ルネとの経営統合で加速する再編の中、 富士通はどんな財務状況だったのでしょうか? 今までの投資の姿勢、それを後押しするキャッシュの流れ、 財務体質が気になります。 以下では、08年度まで直近5年間の当社の財務状況を基に 分析します。 富士通の株価を見る前に~決算・財務分析はこちら 富士通の企業分析 ■P/Lの視点 前期比の伸び率は、売上が4.5%、営業利益が12.6%と、順調です。 ただし、08年に純利益が純利益が50%減少しています。 営利利益が向上する中、純利益が減少するということは、 特別損失の影響です。 何が起きたのか理由を確認する必要がありますが、 まずはざっと全体を見渡してから、有報で詳細を調べましょう。 次は、実際のキャッシュの流れを見てみます。 ■C/Sの視点 営業CFは07年の4100億円まで順調に伸びていましたが、 08年には20%減の3200億円となっています。 投資CFは08年は2800億円のマイナスで、 特に設備投資額は毎年拡大しています。 財務CFは直近5年で、08年のみプラス620億円になっています。 07年までは、儲けの範囲内で積極投資を行い、 同時に債務返済も実施していましたが、 08年は営業CFが減少した分、借入を行って投資を行っており、 キャッシュの流れが変化していますね。 それでは、B/Sにはどんな変化が現れているのでしょうか? ■B/Sの視点 総資産が07年から3%分、1000億円減少しています。 運用面では、売上債権、棚卸資産が合計660億円の減少、 仕入債務が520億円の減少と、運転資本が減少しています。 また、現金等は1000億円増加しています。 P/Lで見たように売上は増加していましたので、 売上の伸びに対して運転資金が減少していることになります。 例えば、売上の伸びに対して、売掛金が減少しているということは、 より大きな現金回収ができている、ということになります。 つまり、運転資金が少ないほど、 売上から得られるキャッシュが多くなり、 実際の儲け分である営業CFは大きくなる、ということです。 実際、運転資本回転日数を見ると、 05年は”20日”に近かった数値が、 08年には"3.2日"へ大幅に向上していますね。 営業CFの確保度合いを大きくし、 なおかつ総資産を圧縮していることからも、 機動的な財務体質に向けて改善を行っているように窺えます。 ■まとめ(分析からの気付き) 先に08年の特損の内容を確認してから、分析内容をまとめます。 有報でさっと確認すると、特別損失は700億円規模で、 1.LSIの事業構造改革費用、開発・生産拠点のスリム化で250億 2.米国株の評価損、250億 3.会計基準早期適用、在庫洗い変え250億 と、米国株の評価を除いては、 将来に向けて前向きな損失計上を行ってたようですね。 それでは、さっと見てきた情報からのまとめですが、 売上・営業利益も順調に推移する中、 将来のために毒抜きを行い(P/Sの視点)、 積極的に投資を続けており(C/Sの視点)、 営業CFを確保し易い体質へ変化しているようです(B/Sの視点)。 本日の記事では、富士通はLSI生産を外製化する戦略へシフトしたようです。 業界再編が加速する中、将来への投資を積極的に続けながらも 柔軟に意思決定し、先行き不透明な経済環境の中、 売上が落ちても営業CFを確保できる財務体質にして、 収益改善に取り組んでいるようですね。 富士通の株価を見る前に~決算・財務分析はこちら 富士通の企業分析 ご不明な点等ございましたら、 是非シェアーズまでご連絡ください。 感想もお待ちしております! support@shares.ne.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月29日 15時48分09秒
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