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カテゴリ:実践!企業価値評価
利益首位 NTTの憂うつ 今こそ光回線に投資を ■記事への素朴な疑問 09年3月期の営業利益が1.1兆円と、 上場企業で6年ぶりに首位に立ったようです。 今回の事実について、記事では以下のように書いてありました。 ”同社社長は、顧客企業から 「もうけ過ぎ」と言われないかと心配する。” この心配は、同社が事業計画 「2010年度末までに光回線の加入数を2千万世帯にする」を、 景気後退を理由にあっさり断念してしまい、 投資・営業費用の増大を回避したために、他企業が不調の中で 期せずして儲けが露出したことから来ています。 NTTは通信インフラの保有・投資が巨額であることが想像されますが、 同社の投資CFの推移や、有形固定資産回転率から、 投資への積極性を確認しましょう。 以下では、08年度まで直近5年間の当社の財務状況を基に分析します。 NTT(日本電信電話)の株価を見る前に~決算・財務分析はこちら NTT(日本電信電話)の決算・財務分析 ■P/Lの視点 売上は-1%ずつ減少傾向で推移しています(08年は10.7兆円規模)。 営業利益・純利益も減少傾向にありましたが、 08年のみ上昇し、営業利益は前期比18%増の1.3兆円、 純利益は33%増の6400億円となりました。 有報でさっと確認すると、 08年は経費削減等による営業費用の減少で増益となったようです。 次に、実際のキャッシュの流れを見てみます。 ■C/Sの視点 FCFが常にプラスであり、返済も行い続けています。 営業CFは2.5兆円から3.5兆円で、投資CFは2兆円前後で推移しています。 08年の有形固定資産への支出は、前期比20%減少し、1.3兆円なっていました。 儲けの範囲内で投資を行い、潤沢にキャッシュが流入しています。 08年の投資減少は、FOMAサービスエリアの拡充等で行ってきた 積極投資がピークを超えたため、とありました。 それでは、B/Sを見てみましょう。 ■B/Sの視点 総資産は18兆円で、規模・構造ともに前期と大きな変化はありません。 運用面では、総資産に占める固定資産の割合が約80%、 そのうち有形固定資産は10兆円です。 調達面では、短期・長期借入金は43%、株主資本比率は40%となっています。 有形固定資産の割合・額が非常に高く、 装置産業としての財務構造が明瞭ですね。 さて、気になる経営効率を見てみましょう。 ■経営効率の視点 08年のROICは6.2%、 その要因は収益性である営業利益率の高さ7.3%にあります。 ただし、効率性を意味する投下資本回転率は0.7と、 1を下回っており、5年間一定です。 その主因である「有形固定資産回転率」は、5年間ずっと1のままです。 例えば総資産がより大きく積極投資を行っている トヨタ(総資産32兆円)のそれは08年で3.4であり、 それまでに上下動しています。 NTTほどの有形固定資産を持つ巨大装置企業にとって、 同指標は戦略的投資とその回収(ハードからのキャッシュ回収力)を 意味する特に重要な指標と考えますが、 これが一定して"1"ということは、 「長期の戦略を見据えた積極的な投資を行っていない。」と感じます。 ■まとめ 減収減益傾向の中、08年は経費削減で増益しました(P/Lの視点)。 FCFがプラス、投資CFが一定程度で推移する中、 08年は有形固定資産投資が20%減少していました(C/Sの視点)。 総資産の額・割合の変化はなく、固定資産が80%を占め、 有形のそれは10兆円と巨額です(B/Sの視点)。 投下資本回転率が1を下回り一定であり、 特に有形固定資産回転率が5年間"1"のままです(経営効率の視点)。 本日の記事にもありましたが、C/SでみたようにNTTの投資額は 2兆円と巨額であり、特に光回線への投資等通信インフラの整備は 日本のIT産業振興に大きく寄与するため、 本事業への積極投資に期待したいですね。 NTT(日本電信電話)の株価を見る前に~決算・財務分析はこちら NTT(日本電信電話)の決算・財務分析 以上の分析でご不明な点等ございましたら、 是非シェアーズまでご連絡ください。 感想もお待ちしております! support@shares.ne.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月29日 15時53分25秒
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