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2006年12月27日
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カテゴリ:読書日記

浅羽さんの『右翼と左翼』(浅羽通明・幻冬舎新書)を読んだ。
右翼と左翼.jpg


前々から、「右翼」「左翼」なる言葉の定義をきちんと用いている人が少ないなーと思いながらも、自らの中であまり整理がついていなかったことが割とすっきりした。

浅羽さんは『ナショナリズム』『アナーキズム』(ともにちくま新書)の二著でもそうした役割を果たしたが、思想史の流れをきわめて広く浅く概括的に説明することに非常に長けている。この本もきわめて簡明にて明朗な文章でかかれており、誰でも近代思想史の概要を掴むことができる(普段思想というものに触れていない人でも)。

まず、よく言われるフランス革命後の国民公会において、ジロンド派とジャコバン派が左右に座ったというのが始まりとされるのが微妙に間違っているというのは、面白かった。ここでいうジャコバン派とは狭義のジャコバン派であり、広義にとらえれば、フイヤン派以外の議員を指すのであり、ジロンド派もまたジャコバン派の一部であること、狭義のジャコバン派はモンターニュ(山岳)派と呼ぶのが正しいことなどは勉強になった。また、自由左翼、権力左翼、抵抗左翼という分類も非常に勉強になった。

とかく日本では、反体制・平和主義と結びつきやすい左翼思想ではあるが、これは日本に特殊な傾向でもある。共産党独裁軍事国家である中国やかつてのソ連を想起すればわかる。共産党の独裁を倒そうと反政府運動をする人間は右翼分子なのだから。反体制・平和を主張するのは日本の左翼なのである。

煎じ詰めれば、左翼とは、革命のテーマである「自由・平等・同朋愛(呉夫子はこれを「義兄弟」とする。非常に面白い)」を推し進める思想であり、右翼はそれに対するリアクションに過ぎない。それゆえに右翼思想とは非論理的にならざるをえず、激情に走りやすいのである。ややパラドキシカルではあるが、右翼思保守思想(右翼思想)というのは、常に革新思想(左翼思想)よりも新しいものなのだ。

また、左翼こそがナショナリズムの走りなのであるという点にも留意すべきである。それまでの旧体制下を破壊し、「自由・平等・同朋愛」を旨とした均一な国民を育てあげることこそが近代国家の急務であった。従って近代化を推し進める以上、ナショナリズムとは元来左翼思想の産物なのである。ここで、右翼=ナショナリズムという、通俗的な思い込みは微塵に破壊される。右翼思想であれば、均一化された国民や近代国家という枠組みにはめられることに抵抗を示すからである。

右翼思想が、作られた伝統であるところの近代国家なるものを物象化し出したのは、つまるところ、左翼思想がインターナショナル的要素を孕みだしたからであり、お馴染みである右翼思想のカウンターであるに過ぎないというのが一面では正しい。

明治には真の右翼はいないという。なるほど天皇といえども開明化された近代文化日本のシンボルなのであるから、当然である。右翼=王党派=保守反動反近代派としては、徳川幕藩体制擁護こそが論理としてあるべきなのである(成島柳北、永井荷風が例としてあげられている)。呉夫子が、「反天皇といったってアカイ旗(共産党)とは限らない。アオイ(葵)の旗の可能性もある」と喝破したのはこのことである。西郷隆盛や大久保利通こそが極左運動家だったのだ。

また、これは石原慎太郎もどこかで書いていたように思うが、共産党・全学連などの反米運動こそが、実は国民の反米の空気を吸い上げて発散していたことも面白い。思想転回後の愛国的な行動こそが、実は左翼思想の中に見られるのである。自民党が党是として掲げながらも(それは終戦直後の大衆の中の空気によるものだった)、有名無実化し、米属国領であることを容認している一方で、実は左翼側が行き所のない国民の独立願望を吸収していたのである。

平易な文章ではあるが、非常にまとまっている内容の、ためになる本だった。
現在は、『集中講義!日本の現代思想』(仲正昌樹・日本放送出版協会)を読んでいるのだが、図らずも浅羽さんの著書を敷衍したような内容の個所があり興味深かった。こちらは、もう少し深く掘り下げつつ、右翼左翼に限られずに、現代思想という現象の概要を説明しているものである。自分の中で点在していた知識が、流れの中に位置付けられていくようで、読んでいて非常に心地よい。

集中講義.jpg

いずれにせよ、右翼思想も左翼思想も、近代の産物に過ぎず、近代の枠組みの中で論議されるものである。そうした枠組み自体を見えないものとして、与えられた枠組みを自明のものとしてそれに安住していることは、時折方向を誤らせることになりうる。呉夫子が自ら「封建主義者」と名乗ったのは、あまりに驚異的なことではあったが、一方でこの点を恐ろしく鋭く突いたものであった。 

 

 
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最終更新日  2006年12月29日 00時20分40秒
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