『巨大投資銀行』という小説を読んだ。
買ったのはずいぶん前だし、上巻はかなり前に読了していたのだが、
今回久しぶりに再開し、下巻を読み終えた。
この手の経済小説というのは概してつまらないものが多く、
有名な弁護士が書いた小説とか、高杉良の『ザ・外資』とかは、はっきりってあまりおもしろくない。
しかし、この小説は素直に面白いと思えた。
俺のような素人からすると、高度に専門的な用語が用いられており、
また仕事の現場の雰囲気がよく伝わってくる。
外資の投資銀行で勤務する日本人を主人公として描いているが、
その緊迫感のようなものや、俗な言い方をすれば颯爽とした格好良さも、気持いい。
80年代後半からのバブルから9・11テロ以降までを丹念につづっており、
短期的な経済史の勉強にちょうどよかった。
ああ、なるほどね、という感じで。
会社名(ソロモン、トラベラーズ、ゴールドマン・サックス等)や個人名(メリウェザー、ミルケン等)の多くが実名で記されており、また実名でなくても多少変えただけで気づくようになっている(モルガン・スペンサー、竜神等)。
いかに外資金融機関、なかんずく投資銀行と呼ばれる連中が、日本の金融界に大きな影響を与えるにいたったかが、非常に生々しく、かつリアルさをもって伝わってくるので、有意義であったといえる。
なお、俺がこの小説を評価するに当たっては、よくありがちなエリートビジネスマンだが無教養といったきらいがなく、著者に教養が感じられる点。
著者は実際にイギリスの投資銀行での勤務経験があるそうだが、随所に感じられる教養には、素直に感服した。
仮に、付け焼刃的に調べて書いてあったものだとしても、その姿勢は好感が持てた。
というわけで、ほめてばかりだが、ストーリーとしても楽しめるので、お薦めです。
しかし、バブル期(とそのちょっと後)のソロモンというのは、本当に荒稼ぎしたんだなぁ。
火曜日 丁巳
六輝=赤口 九星=六白金星 中段十二直=満 二十八宿=觜 旧暦二月十一日