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カテゴリ:猿楠
朝起きてみると、まだ、といったら変な言い方だが、
ワーニャは生きていた。 この様子だと1週間はもたないだろう。 ワーニャに会うのは今日が最後になるかもしれない。 午前中は、少し山のほうへクルマで出かけた。 ヤビツ峠からの眺めはすばらしかった。 帰ってから午後は、ずーっと家にいた。 早めに帰ろうかとも思ったが、 とにかく最後かもって思うと、そうはいかなかった。 それでも夕飯を食べて、さすがに9時くらいになったし、 明日は朝から会議なので、帰ることにした。 最後にワーニャのところへいって、 話しかけて、なでていたら、涙が出そうになってしまった。 なので早々に立ち去ってしまった。 ワーニャはもう意識がほとんどない。 声をかけても反応しないし、ある種の昏睡状態なのかもしれない。 東名は多少混んでいたけど、1時間半でついた。 家に着くなり、母親に電話をかけた。 すると、母親は涙声だった。 ワーニャはその命の灯を消してしまったらしい。 俺が帰ってからすぐ、父親が様子を見に行ったら、 もう冷たくなっていたということだ。 母親は、 「あんたが一番かわいがっていたから、あんたが帰ってくるのを待っていたんだね」 といった。 確かにそうかもしれない。 犬でもやはりそういうことはわかるのかもしれない。 「だからあんたが帰ったら安心したんだね」といっていた。 自分としては、目の前に今ワーニャ(だったもの)があるわけではないので、 にわかには信じがたかった。 高校1年生の冬、8年間飼っていた白い雑種犬が死んだ。 小さいころから一緒に遊んでいたので、 そのときの衝撃はあまりに大きく、狂ったように数日間ないた。 ごはんも食べずにふさぎこんでいた。 今回はどうだ。 そこまでではない。 16歳の俺とくらべて、31歳の俺はそこまでナイーブではないし、十分に大人だ。 あのころと違って、俺は東京で離れて生活をしている。 だから、なのか。 ワーニャと離れて暮らし始めたから10年近く経つ。 たまに実家に帰って散歩にいったり、遊んだり。 もっと一緒に時間をすごせたら、と思いつつも、 自分の用事をやはり優先してしまって、 帰るときに、「今度はもうちょっと遊んでやるからな」といって帰ることが多かった。 それでも庭で遊んだり、山に行ったり、 本当にいろんなところへ行った。 夕方散歩をしているときは、悩みを聞いてくれるいい相談相手だった。 本当にたくさんの時間をいろんなことをして、一緒に過ごした。 電話を終え、風呂に入った後、 俺は物置の中をひっくり返して、ワーニャの写真を引っ張り出してきた。 初めて家に来たときの写真がある。 とてつもなく小さいワーニャの写真がある。 庭でボールで遊んでいる写真がある。 山で飛び跳ねている写真がある。 何かにつけて、フィルムがあまると、 ワーニャを撮ることが多かった。 なので、割とさまざまな写真がある。 それを一枚一枚ゆっくりと眺めながら、 一人で焼酎を飲んだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年08月29日 17時23分33秒
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