2011年07月26日 読売新聞朝刊23頁より引用
アルゼンチンで開催されていたコパアメリカはアルゼンチンとブラジルの試合を中心に見ていた。今大会の焦点は地元開催のアルゼンチンが優勝出来るかどうか、そして現時点では世界最高選手との誉れが高いメッシがアルゼンチンにタイトルをもたらすことが出来るかどうかが最大の関心事だったが、結果はご承知のようにアルゼンチンはPK戦で敗退。
ことFWだけを見ればアルゼンチンは世界最高レベルにあると思うが、肝心のFWを活かすだけの人材が中盤におらず、メッシ一人がいくら孤軍奮闘したとしても勝つことは出来なかった。改めてバルセロナにおけるシャビ・イニエスタの偉大さを確認した次第だが、チームとしてメッシを活用する手法を確立していないのは明らかだった。
この点、決勝戦のウルグアイ対パラグアイは両チームともに戦い方がはっきりしており、共に堅守速攻でならすチームではあるものの、見ていて実に楽しい試合だった。後半開始早々のパラグアイのゴールバーを叩いたシュートがもし入っていたとしたら、別の試合展開になったことは間違いなく、その意味で守って、守って、そして速攻で得点を狙うパラグアイには不運だったかもしれない。
それにしてもウルグアイの戦い方は誰にでも明確に分かるほどシンプルで素早い。とにかく選手、監督、サポーターいずれもスアレス頼みのチーム戦術。ボールを持った瞬間、あるいは持つ前から常に全員がスアレスの居場所を確認し、隙あらば出来るだけ素早くスアレスにボールを渡すこと、それだけしか考えていないのだ。
スアレスにボールを渡せば後はなんとかしてくれる、だから彼にボールを徹底して集める、そういう戦術だったが、それに応えたスアレスも見事だった。敵の一人や二人が前にいても強引に突破してしまう体の使い方はお見事で、かつてのロナウドやバティストゥータ、そしてクリスティアンビエリを彷彿とさせるもの。
まだ欧州開幕前なのに、この時期にこれだけの切れ味を見せていたら年明け後は急に失速するかも、などと要らぬ心配をしてしまうほどに絶好調だ。見ていて何かやってくれるんじゃないかと期待感を抱かせる数少ない選手の一人だが、まだ24歳なのでこれからのリバプールでの活躍が見逃せなくなってきた。
少々残念だったのが、ブラジル。2014年自国開催のワールドカップを見据えたチーム作りをしているのは明らかで、特に期待してみていたのがネイマールとガンソ。ともに局面では鋭い切れ味のドリブルやスルーパスを見せるものの、全体を通して見ると今ひとつ迫力不足なのが否めない。
まだまだ発展途上にあるのは間違いなく、2014年にはネイマールは手がつけられないほど成長している可能性もあるが、現時点では様子見。好調時のパトのプレイを知っていると、コパアメリカのパフォーマンスは少々期待はずれだったが、7月コパアメリカ開催、8月下旬セリエA開幕を考えるとこんなものかもしれない。スアレスとは対照的だったが、ここ数年怪我で戦線離脱が多いだけに、この時期じっくりと体作りに励んで欲しいものだ。
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