2009年09月11日に掲載した
『江戸東京たてもの園・荒物屋の丸二商店』
東京中央区、幹線道路から一歩入った裏通りには見るからに明治大正、あるいは昭和初期に作られたのだろうと思われる木造二階建ての建物がいくつかある。ふと周囲を見渡すと鉄筋コンクリートの建物に囲まれており、その場所だけが時空が止まったかのよう。決して豪華な佇まいではないのだが、郷愁の念すら感じさせるその木造建築物を見ていると、妙にほっとすると同時に一体どんな人たちが住んでいるのだろうと想像してしまうのだ。
さて読売新聞を読んでいたら、千代田区神田須田町、というよりも秋葉原と言った方が分かりやすいが、大正時代に造られた旧家が解体されるという。1987年に建築基準法が改正され、準防火地域での木造3階建ての建設が可能となったが、それまでは2階建てまでだったはず。この旧家の用途地域は知らないが、当時3階建ての木造建築物と言えばそれだけで珍しかっただろう。
それにしても古色蒼然とした、この緑青仕上げは実に味わい深いものだ。幾多の困難を乗り越えて刻まれた、生き証人とも呼べる銅板独特の地肌が歳月を感じさせると共に、その人となりを連想させるのだ。
2012年09月08日 読売新聞 夕刊 31頁より引用 |
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