カテゴリ:法律いろいろ
今日は1限から。眠い体をゆすりながら行くと山手線がとまってる…どうやら人身事故らしい。やっとの思いで起きて出て行ったのに遅刻を余儀なくされてしまった。教授も結構遅く始める教授だったからよかったものの、電車の中で腰が変な形に曲がってしまいとても痛かった。 むかついたので今日は人身事故の当事者が震え上がるような話をしよう。 人身事故とは、大体鉄道が人をはねることを言うようだ。飛び降り自殺、誤っての転落、突き落としての殺人なども鉄道としては一応人身事故である。 では、人身事故の場合、発生した損害は誰が賠償するか。 当然「鉄道を止めた人物」である。突き落としての殺人なら犯人のところにいくし、転落・自殺の場合には当然転落した人、自殺した人に行く。彼らとて鉄道の上に降りたりすれば鉄道が止まり、何千何万という人の足に影響が出ることがわからないはずはない以上、損害賠償しろということになる。 でもそういう人って死んじゃってるんじゃ…と思っているあなた、それは甘い。死亡者の親族は順位に従って死亡者の財産を相続するのだが、相続は「債務も含めて包括的に」するもの(民法896条)。持っている財産は手元に、借金はいらないというのは通用しない。従って、自殺者の相続人である親族が賠償しなければならないということになる。 この金額は莫大だ。ブレーキが磨耗したり、電気をもう一度つけるだけで数万円の電気代がかかる。車両が血まみれになれば洗わなければいけないし、へこめば修理もいる。 何より多くの人の足が止まって払い戻しとなれば全部止めた人間の責任だ。よその私鉄に頼んで振り替え運送などということになったら費用はものすごいことになる。 また、鉄道会社に限らず、足を止められた一般の乗客は鉄道会社に何とかしろということはできないようだが、その分は止めた人間に何とかしろということができると考えられる。労働できなかった時間の休業補償あるいは時間を埋め合わせるための乗り物代などが賠償の範囲として認められる可能性は高そうだ。まあ一人千円くらいが上限になると思われるので誰も訴えたりはしないだろうが、首都圏で何万人もの足を止めてしまうとすごい金額になる。 もし彼らがいっせいに訴えたら…さぞかし恐ろしいことになるだろう。 以前は自殺などという状況を考えたり、こんなことで人生を破壊させてはかわいそうかなあ…ということでめったに賠償請求しなかったようだが、この不況のご時勢には、そうも言ってられないようで鉄道会社も賠償を一応請求するようだ。それに請求するということがはっきりしていれば鉄道自殺の抑止になることも考えられる。 もちろん、遺族としては相続放棄(民法915条)という技を使って借金から逃れることはできる。ただし、それだとせっかく持っていた財産はパー。財産的な価値のないものを形見分けするか、競売に出されたものを買い戻すほかは、全部競売という形で鉄道会社がさらっていくことができる。 しかも死亡を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に行って手続きをとらないと放棄はできなくなり(民法915条)、他人の借金で人生めちゃめちゃということになりかねない。一応債務があったことを知ってから3ヶ月という解釈が実務では採用されているようだが、鉄道で死んだということを知っている場合に「債務があることを知らなかった」という言い分はおそらく通らないだろう。 ちなみに、死亡保険金は一応遺族が確保できる。ただし加入してから一定期間(多くは12ヶ月、最近24ヶ月というところも増えたらしい)以内に自殺をすると保険金は下りないのが通常。 まあ人身事故を起こさなければなどと思っているあなた、甘いですぞ。 ドアが閉まるときに駆け込んで荷物を挟む人。あれだって列車の遅延を招く行為。普通はあの程度なら埋め合わせがきくから賠償請求されないがもし埋め合わせが効かなくなればお前のミスで鉄道が止まったんだから賠償金払えということになる可能性はある。 さらに忘れちゃいけない刑事処罰。すなわち電車を止めて線路を閉じ、その往来を妨害したとみなされて往来妨害罪(刑法124条1項)になるか、あるいは一定の実力により鉄道会社の営業を妨害したとみなされて威力業務妨害罪(刑法234条)で処罰される可能性は高い。処罰は罰金刑を除けば相続されないが、生き残った者は当然処罰されてしまう。 さすがにこれは故意の人間以外処罰されないのだが、人と別れたくないばかりに閉まるドアをこじ開ける人。あれも電車を止める行為であってしかもその間止まることを認識してやっている以上故意のそれとみなされ、刑事処罰されても文句は言えない可能性が高い。 自殺をする人になにを言ってもムダかもしれないが、少しでも理性が残っているなるのならせめてこれくらいのことは考えてもらいたいものだ。 いや、それ以前に自殺なんかするな!! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年10月26日 14時46分35秒
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