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碁法の谷の庵にて

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2009年04月11日
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カテゴリ:囲碁~碁界一般編
 将棋の名人戦で、観戦記者の方が羽生善治名人の考慮中にサインを羽生名人に求め、羽生名人がそれに応じるという騒動があったとのこと。
 そのシーンの映像は、ようつべの方で見ました。トイレに立った最中でも何でもなく、フツーに考えている所に求めるのが凄いですね。しかも全国に放送中。マナー論抜きにしても、1000万あげるからやってみろと言われたって私はお断りですね。こんなことやったら私は恥ずかしくて人前に出られません。


 まあなんといいますかねえ。二日制の2日目で、結果も羽生名人の勝ちということでしたから、後味の悪い結末ということにならなかったのは何よりでしたが・・・。
 それでも、相手の郷田九段としても気が散るところではありますし、羽生名人も頭抱えて考えていたところだっただけに、この観戦記者はもう観戦記者として出入りさせてもらえなくなるでしょうね。
 囲碁界でも、昔観戦記者に文筆家を使っていた頃、終局は当分先だと思って物見遊山に出掛け、帰ってきたら碁は終わっていましたと書いた大物というかなんというかがいたらしいですが。


 そこで観戦記者の釈明がまたふるっています。

 「相手の手番だと思っていた」

 囲碁界でも、強い人間は相手の考えている間であったとしても自分の方で次の着手や構想を考えるということは一般常識に過ぎません。「ヒカルの碁」でもそのことを明確に示しているシーンがあります。将棋界は囲碁界と違って時間つなぎなどという手段が通じませんから、時間は囲碁界以上に貴重です。
 少なくとも囲碁界では、観戦記者はそこまで強豪ばかりではないとはいえ、観戦記者という人たちはプロ棋界にある程度は精通していなければならない人物のはず。それがこの体たらくでよいのでしょうか。そんな釈明なら、むしろ釈明しない方がましだったとさえ思えるほどです。

 まあ、観戦マナーに関して言えば、私もあんまり人のことが言えた義理ではないですけどもね。学部時代、合宿でしゃべりながら打っていたから検討中なのかと思って口を出したら本番だったなんてこともありましたが。





 この事件に関して一つ思ったことを。
 サインを求められた羽生名人は、淡々と応じていました。羽生名人は人がいいし、(たぶん)慣れているから・・・ととらえることは簡単ですし、今回に限って言えば、おそらく真相はそんなところではないかと推察していますし、今回のことで羽生名人の株はむしろ上がったのではないかとも思います。

 しかし、立場的に、ファンからのそういった行動に対して、断るということが難しいということも念頭に置く必要があるかと思います。
 「黙れ!対局中だぞ!」と怒鳴った所で少なくとも私は羽生名人を批判する気は微塵も起こりません。しかし、棋士という立場上、断りきれずに笑顔でサインに応じてしまう人がいたとしても、全くおかしくないことです。
 ファンは強くて、棋士は弱いというのが、悲しい現実です。
 だから、ファンはしっかり自らを律する必要がある・・・はずです。強いものほどしっかり自らを律しているというのは、刑事裁判を学ぶ者ならば瞬時に理解できる常識に属するはずなのですが、どうもそれが分かっていない方もおられるようです。
 当然のように、今回の観戦記者に対しては新聞社の方からこっぴどくお説教が行ったとのこと。
 

 自らを律することのできないファンで埋め尽くされ、そこに何の抑止も働かない世界は、堕落して日本社会で存在を許してはならないものになってしまうでしょう。
 





 ちなみに、なんか日本勢が富士通杯でむちゃくちゃ頑張ったらしいです。へーえ。
 今までのペースからすれば、2回戦で残り0人か1人になると思ってますんで全く期待してませんが、まあとりあえず頑張ってくださいとは言っておきます。





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最終更新日  2009年04月14日 23時52分50秒
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