テーマ:ニュース(100180)
カテゴリ:その他雑考
大津いじめ訴訟事件で、他の生徒への聴取が始まったとのこと。
・・・しかし、ここまでのネット住民の大騒ぎは、生徒への聴取をやりにくくしてしまう恐れがあるということを考えたことがあるでしょうか。 当然ながら、真犯人であろうとなかろうと、法的に正しい手続を踏まない限り供述を強制することはできません。 そして、今回の騒動ではいじめと関係ない病院に電凹が行くなど、事態は赤の他人さえ犯人あるいはその関係者として巻き込む事態になっています。 当然、事情聴取されている生徒やその親たちも、このことを認識せざるを得ない立場にあります。 そうなった時に、事件について聴取されている生徒さんは知っていることを知っている限り喋ってくれるでしょうか。 普通はとても怖くて喋れません。 もちろん、警察はそんな情報をたれ流すような真似はしないでしょうし、先に秘密を守ることを伝えると思われます。 しかし、現実に赤の他人が関係者と間違われ、ひどい目に遭っているような事態です。 そんな状態で、いきなり自分の前に現れた警察関係者の言うことをどこまで信じられるでしょうか。自分の知っていることを全て話せるでしょうか。 自分の発言がどう自分の人生に影響するか分からない事態に立ち至って、すいすいと喋れるでしょうか。 刑事事件関係では、「ただ聞くだけ」でさえ、もしかしたら自分は犯罪者になってしまうのではないか。自分は少年院に行かなければいけない?なんて不安を聴取対象の少年たちが憶えるおそれがあって、質問には慎重にならざるを得ないのが実態(正確な少年法その他刑事関連法規の法律知識を得るのは難しい)です。 大人でも当然ですが、大人以上に、少年の取調べや聴取には慎重にならなければいけないのです。 少年逆送事件で、遺族が傍聴席からヤジを飛ばしたために、少年は自分の身を守るようなことばかりを言い、自己防衛的なことしか喋らなくなってしまったということすらありました。 にもかかわらず、インターネット上でうわーっと攻撃されているシーンを目の当たりにすれば、聴取される少年たちはますますそうした事態を意識せざるを得なくなります。 また、親たちも家族を守らなければいけません。 警察に聞かれたからと言って、勝手なことを言っちゃだめだと指導するのは、私が親ならやるでしょう。 例えいじめに関与しておらず、その通り話したとしても、おかしな情報が流れて攻撃対象にされようものなら、ひとたまりもなく家庭は破壊されてしまうからです。 これは、取調べの可視化に関する論争と重なるものがありますが、検察系の実務家が根強く抵抗するのはまさしくそういうことなのです。 取調べを可視化したら、ニコニコやらようつべやらに流すような可視化をしなくとも、被疑者は怖くて口を開いてくれないのではないかという不安があるためです。 もちろん、取調べの可視化については、それで真相解明が多少難しくなったとしてもしょうがない、それよりも密室での自白が冤罪に寄与することを防止する方が大事だ、と言う価値判断があります。 しかし、インターネットの大騒ぎは、真相解明を求め、いじめ少年たちなどどうでもいいに近い対応を取っていたはずです。 にもかかわらず、こうして大騒ぎをした。しかも、赤の他人にまで累を及ぼすような大騒ぎをした。 そのために、いじめ少年たちへの追及や真相究明の手が遠ざかってしまうという可能性は、インターネットで狂奔している方々は考えたことはあるのでしょうか。 北風と太陽と言う昔話を、今一度思い出した方がよいと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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