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碁法の谷の庵にて

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2012年11月10日
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テーマ:ニュース(99411)
 昨日は、令状について、令状発付した裁判官の問題を指摘しました。
 コメントで書いたとおり、令状請求した側の責任として警察の責任を指摘するのはあるとしても、読み上げを否定するのは筋違いです。

 しかしながら、令状に書かなかったとして、被害者の住所氏名などのプライバシーが刑事手続において絶対的にバレない、というわけにはいかないのが実情です。
 
 令状が発布された時に分からないように令状が出されたとしても、取調べの時に被害者が「誰か」ということは、少なくとも伝えられるでしょう。
 被害者が誰かもわからないのでは、被疑者としても弁解ができません。取り調べの重要な機能である、被疑者側の言い分を聞くということが、全くできなくなってしまうのです。取調べで被疑者の言い分を聞かない・・・冤罪の典型例ですよね。
 例えば「ストーカーと言うけど、その人のことなら、節度の範囲で借金を取り立てていただけで、正当な行為です」というような被疑者側の言い分があっても、被害者が誰かわからないのでは出せません。
 


 有罪立証のための証拠として必要ならば、被害届や被害者の供述調書も証拠として提出されます。ことに脅迫とかストーカーのような犯罪の場合、被害者の言い分そのものか、その調書を抜きにして立証するのは極めて困難と言わざるを得ないでしょう。
 そして、刑事裁判で証拠申請するならば、弁護人には証拠として出される記録を見る権利があります。というか、見もしないで弁護できません。弁護人がつかないなら被告人に直に見せるしかありません。

 それでも、被疑者サイドに犯行に身に覚えがあって、犯行の手口などを全部喋って、●●さんに対して犯行を行ったことは認めます、そして全部被害者の調書と一致しました、というのを前提にするのであれば、あえて必要のない情報は教えない、ということはできます。
 加えて、一応、現行法上の規定では、被害者のプライバシーに関する事項について、弁護人に対s、必要がない限り被告人に教えないように求められる、という規定はあります(刑事訴訟法299条の2等)。
 私自身も、特に被疑者側から求められない、必要がありそうにも見えないのであれば、基本的には被害者のプライバシーに属する情報は教えません。知りたい、と言われたら、どうしてそんなのが知りたいの?ということを確認した上で、明らかに不要となれば教えないという手を取ることもするでしょう。
 必要性もなく、不当な目的に使うことが強く予想されるのに教えました、なんてことになれば懲戒ということも視野に入りえます。

 が、そうではない、被害者の言っていることが真実と違うぞ、ということならば、当然調書は不同意、立証したければ証人として被害者を呼べということになります。証人を読んできて尋問させよ、というのは憲法上の権利(憲法37条2項)ですし、実際そうした尋問で信用性の怪しさが暴かれ、無罪になる例は決して少なくないのです。
 そうなれば、証人申請する人間の住所と氏名は弁護人に伝えられます(刑事訴訟法299条)。

 被害者の身分関係によっては、そんな立場の人間の言うことは信用できないという主張をする必要もあるので、プライバシーに係る情報とて無視できませんし、それを被疑者に伝えて言い分を引き出す必要がある場合もあります。
 
 
 こうした過程を経て、信用性が審査され、被告人をやっと有罪にできるのです。
 どうしてもそれが嫌です、ということでは、被害届を出して処罰を求めても起訴もできない、起訴できても有罪判決が下せない。ヘタを打てば犯人からの民事訴訟にまで怯えなければならない、という苦しい事態を招きます。

 もちろん、現実には、こんなことを意識しなければならない事件はそんなに多くはありません。私が先ほど書いたように、運用配慮として伝えないで済ませられることは結構多いからです。
 だから、逆に被害者を脅すようで、警察なども伝えにくいという面はあるでしょう。

 しかし、何があっても絶対にプライバシーがバレたくない、警察には話しても被告人には絶対に知られたくない、ということであれば、残念ながら処罰を求めるのは諦めるしかないのです。
 犯罪者を警察に突き出して処罰を求めるというのは、被害者にとって自身のプライバシーをばらしてでも処罰してくれということだ、ということを認識する必要があります。






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最終更新日  2012年11月10日 21時15分55秒
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