カテゴリ:法律いろいろ
題名を見て一瞬何だ?と思われるかもしれませんが、とりあえず本文を読んでくだされば、意味が分かるかと思います。
本日は成人の日ですが、成人関係では少年法の適用年齢がしばしば問題になっています。 基本的には適用年齢を下げる、という路線で検討が進められているようです。少年法を守ろうという主張をする方々も、成人年齢を引き上げようという主張はあまり見ません。 しかし、私はこう考えています。 現在の少年法では、20歳未満であれば嫌疑なしなどごく一部の例外を除いて全ての件を家庭裁判所に送致する、という扱いになっています。(全件送致主義) そして、これが必ずしも少年に対して甘いわけではなく、比較的多い傷害・窃盗などの件ではむしろ成年より厳罰(厳処分)となるケースが多いという話は、以前の記事でも話しましたのでここでは多言しません。 その上で、私は、18歳から20歳までは全件、少年審判に回すかどうかについて検察の裁量権を増大させるのが良いと考えています。 検察の方で、家裁送致して少年審判にするか、起訴して通常の刑事裁判にするか選べるというわけです。 代わって、20歳から22歳くらいまで、検察は家裁送致できないのですが、これを家裁送致して少年審判によって対処する可能性を認めるべきではなかろうかということです。 もちろん、これによって20歳以上が少年院に入ったり、保護観察などの処分を受けることもありになるので、少年院法や更生保護法などの関係法令も整備が必要になります。 まず、18歳から20歳までについて。 18歳から20歳までの場合、交通違反で検挙されることが結構ありますが、その場合保護観察や少年院というのは余りにも重すぎるケースがあります。 保護観察や少年院は処遇側のコストもそれなりにあり(保護司は人手不足)、軽微な案件でもとりあえずやらせておけばいい、という訳にもいかないでしょう。 結果として、家庭裁判所は審判を開くことなく書面だけ見て検察官に送致。で、検察官は罰金処分でおしまいという対応がしばしば取られています。 重大事件でしばしば行われる検察官送致ですが、実は検察官送致の7割近くはそういう風に罰金にするために送致する案件です。 さて、こういった件について、わざわざ家庭裁判所に送致することが果たして必要なのか?という問題があります。 家庭裁判所に送って家庭裁判所が検察官送致する手間がほぼまるまる無駄に近くなっています。 だとしたら、大人の裁判として扱い、検察官が最初から起訴した方が良い、というのは合理的な思考だと思います。 なお、検察官が家裁に回すべき件を起訴した場合に、裁判所の判断で家裁に戻せるようにすることも必要ですが、これは現在も対応する規定があります(少年法55条)。 では、20歳から22歳についてはどうでしょうか。 刑事裁判をやっていると、20歳をちょっと回った程度の被疑者・被告人もいます。 そして、彼らを見ると、精神的に幼く、どう見ても少年と変わらないぞ、というケースも少なくありません。 ロースクールで教わった私の元裁判官の師匠も、10年前ですが 「20歳を少し回ったくらいの被告人を見ていると明らかに幼く、処罰より少年法の処分のほうがいいんじゃないかと感じられることも少なくない」と話していました。 法廷でだけ被告人と向き合う刑事裁判官ですらこう感じるくらいですが、弁護人をやっているとずっと被告人と向き合うことになります。その弁護人から見ても、「どう見ても子供だ」と感じられるケースは少なくありません。 何より問題なのが、環境調整です。 成年だって大半が社会復帰するのですから、社会復帰後、どのような環境で生きていくのか、というのを整えるのは非常に重要です。 特に、年少者は社会経験に乏しいので特に重要です。 成年者なら大丈夫か、というとそうとも言えません。20歳になった途端全てが自分でできるようになる人ばかりではなく、親族等がいるならば、その支援を是非とも仰ぎたいところです。 ところが、親族などとももめてしまっており、明らかに社会的に「自活能力がない状態で放り出されている」というケースが多いのです。 そういうのを放置していると、住む環境を調整しないと再犯一直線とか、悪い人たちに声をかけられてズルズル・・・というケースも少なくありません。 たとえ彼らを刑務所に収監したとしても、問題を先送りにする上浦島太郎化し社会復帰を難しくするばかりになります。 家庭の環境調整は少年審判なら裁判所サイドも関与する形でまだそれなりに行われますし、場合によっては補導委託、つまり社会の中で篤志家に引き取ってもらい、裁判所まで含めて関与しながら自立への道筋について様子を見ていくというような手も使えますが、成人の刑事事件だとそれが使えず、検察と弁護人が動くしかありません。 しかし、検察はそこまで深く家庭内調整に関われるわけではありません。 付添人弁護士は本人の意思を無視して活動できません。最悪の場合家族に連絡することさえ「嫌」と言われてしまえばそれまで(家族があまりにも酷いため連絡先が分かっていても連絡拒否する被告人は少なくない)ということがあります。執行猶予判決になったあと、家族とも上手く連絡が取れず、更生緊急保護制度(身寄りのない被告人などが釈放された後に支援される制度)等に放り投げておしまいにせざるを得ないようなケースもあります。少年審判ならば、付添人弁護士が動きにくくとも裁判所サイドが動くことが可能になり、上記のような「おしまい」のリスクも軽減されます。 検察も、量刑には相場があります。あまりに派手に逸脱した処分は公平を害することもあり、簡単にはできません。 初犯で小額の泥棒でも行き場がないから実刑・・・となると罪と罰があまりに釣り合わず、結局検察は不起訴などの対応を、裁判所も実刑にはできず、判決は執行猶予ということにするしかありません。 それならば、少年審判にした上で対応したほうが柔軟で更生させ易いということも起こり得るのです。 こうした成人と少年の区別について形式的な年齢で区切らず、中間的な年齢を設けてどちらに振り分けるかの裁量を大きくする、というのはドイツなどにも例があります。(『少年法の適⽤年齢引下げをめぐる議論』12頁以下参照) また、成人年齢18歳の議論が進む中で、18・19歳の「成人」の更生をどうカバーしていくかという点でも、この考え方が使える可能性があります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018年01月08日 14時08分03秒
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