新文明の到来はいつか
リモートセンシングという名称で呼ばれ、30年ほど前に世間の耳目を集めていたその技術は、地下資源の分布と埋蔵量を遠くから知ることができたため、魚群探知機として早くから実用化されていた。航空機や船舶からの電波信号の反射波を捉えて、そこにどのような物質があるのかを、即座に教えてくれる便利さが,応用範囲を温室効果ガスにまで、及ぼすレベルになっている。最新の報告によると、ハワイ付近の大気中のCO2濃度が、先般ついに410ppmに達したという報告があった。 この方法は衛星からの電波を使い、遠隔探査が可能であることを証明する結果となった。パリ協定を批准したアメリカを除くすべての国家が、吐き出している二酸化炭素を、リアルタイムで捕捉することができ、温室効果ガスの排出量を減らした国と、そうでない国とを一瞬で見極める。だが、現実の問題としてすべての国が、CO2の排出量を減らせずにいるこの現状を、打開する能力を例外なくもたない、ということをただ単に再確認して終っている。交流の長距離高圧送電を世界中で実施しているのだから、温室効果ガスの濃度上昇は増えることはあっても減ることはない。周波数の安定化という事情に、強く拘束されている交流電源は、発電機の回転数を変更することが、要するにまったくきないものであるからだ。乱れのない交流周波数だけが、文明の進化と繁栄とにとても役立つものとなる。 この止まらない温暖化という状況は、現状で判断する限り、果てしなく永遠に続くものであることから、温室効果ガスの濃度上昇が将来のある日、理由なく唐突に止まる、などということは間違いなく考えられないことである。ここが分かっていないと温暖化を止めるための有効な方法を、文明が手に入れることはトワにできない。百年待っても、まったくの無駄。京都議定書がパリ協定へとシフトした事実こそ、その何よりの証明となっている。原発のすべてと火力の大部分は、蒸気発電を行っており、電源のタービン軸を毎分3000回転させることで、50ヘルツの周波数を生み出している。 60Hzの周波数をもつ交流なら、電源の回転数は3600rpmということになる。この円運動量は常に一定でなければならず、乱れた周波数を発生させることは、法令で厳しく戒められている。このため電力需要が節電などで減ったとしても、供給電力の維持確保は業界に課せられた義務となっている。発電機の単位で解列することはできるにせよ、そんな時でも燃焼炉の火は落とせないのである。蒸気圧を元の状態へと復活させるためには、一定時間地下資源を燃やし続けていなければならない。低下した蒸気圧を復活させて発電を再開するには、一定の燃焼が量的に維持されていなければならないからだ。 交流と直流の違いを未だによく理解できていない、というその現実が太陽電池などの再生可能電源を増やせば、二酸化炭素が応分に減るという単純な思い込みを、勝手に下してしまう結果へと繋がっていた。これが、温暖化を止まらなくさせているその最大の理由となっている。電池と名のつく発電装置の総ては、直流電源なのである。太陽電池は交流に変換しなければ、一家の電力を賄うことができない。燃料電池は出力の安定性が見込めることから、そのまま直流回路で使うことができる。 風力発電は交流出力であることから、二次電池に取り込んでからでなければ、安定した周波数を保持することができない。そこでバックアップ用の誘導電源と併用することで、環境性能を高めたように見せかけたのだ。このまやかしに気付く人は、相変わらず誰一人として未だでていない。風力発電のように回転数が風任せ、という電源は交流出力であったとしても、それがもつ周波数は使い物にならないレベルに終始する。 商用電源からのバックアップを有効化させるためには、乱れた周波数を持つ側の再生可能電力を、直ちに捨て去ってしまわなければならない、という表ざたにデキナイという事情があるからだ。二種類の電流を単一の導体上に併存させておくと、電気製品に流す電流は複合状態となるのみならず、交流電圧の振幅を制御不能な状態へと勝手に高め、電力の品位をそれによって大きく損なう。これなども電力業界を秘密主義にしている、たくさんある中のその理由のひとつ。 止まらない温暖化を世に定着させたのは、交流と直流の違いをまったく認識できない知識階級の無知。この問題のもつ本質成分は、違いを弁別する能力の不在という事実に尽きる。電位差で電流を導く交流が電路を構成しているのに対し、負荷で電流を導く仕組みの直流方式は、回路を形成することによって所定の誘導電流を正確に導く。このようにして電気製品に、所期の仕事を円滑に進めさせている。直流回路は電池電源を常に必要とするのだが、交流仕様の既存の電気製品は、その内部で整流しておくことで、交流を直流へと電気製品の内部で変換し、電圧の振動を消すための平滑化を行いながら、負荷が求める誘導電流を正確に発生させている。 電気製品のスイッチをオフにしたところで、交流から直流へと変換している以上、負荷が消えても電力会社の供給義務に、どのような影響も及ぼさない。発電所の燃焼炉ではこうして、絶えず蒸気圧を高めておくことが、根源的に必要な措置となっている。これが交流のもつ限界となったことによって、長距離高圧送電という方式を世界展開することができるようになり、省エネ節電や再生電源の大量投与、で環境効果を導けなくなってしまっていたその本当の理由となった。 送電する必用性を消してしまえば、大電流を発生させる理由も同時に消え去る。小さな交流電源を分散配置するという別の方法は、長距離高圧送電にとって代わり得る有効な手段となるポテンシャルを有する。磁場変化の大きい交流電源の方が、発電効率は直流電源より間違いなく優れている。円運動は交流電源には不可欠であることから、蒸気圧の恒常性維持という前提から離れて、別の方法を採用する道が新たに開ける。エネルギーを人為的に相転移させてやると、新文明に相応しい環境電源を作り出すことができるようになる。 この方法は地下資源を燃やさないという点で、温暖化を防止するための有効な方法となるだけでなく、消費する資源がまったくないというその点で、エネルギーコストを大きく引き下げる効果を発揮するものとなる。どれほど優れた電源が登場したにせよ、それがコストアップを必要とする方法であるのなら、その新電源が文明に寄与する余地は限られる。新文明とは環境負荷のない、それ故にエネルギーコストの最も低い電源が生む、核のない世界の実現を果たすことによって、破壊のための国家予算を、創造するための国家予算へと振り替える。恒久平和の実現という配当を等しく享受する枠組みが、日本で成立した時新文明が誕生したといえるようになるだろう。