|
カテゴリ:会計
先日、流動資産の繰延税金資産についての疑問点を書きましたが、「経営分析バイブル」(高田直芳)という本を読んで、いくつか分かったことがありますので、メモしておきます。
・翌期の業績見通しの妥当性チェック 流動資産の繰延税金資産は、やはり翌期1年分だけのものでした。 これから逆算して、翌期の業績予想の妥当性を判断できるようです。 流動資産の繰延税金資産を計上するということは、翌期にそれと相殺できるだけの税額が発生することを、見込んでいることになります。 すなわち、それに見合う税引前当期純利益を計上できることを、想定しているわけです。 たとえば流動資産の繰延税金資産が40あり、実効税率が40%だとすると、税引前当期純利益は100になります。 それ以上の利益を上げないと、税金の相殺ができなくなりますので、税引前当期純利益は100以上を見込んでいることになります。 その場合税引き後の純利益は、最低でも 100-40=60 以上になるはずです。 もしも会社発表の翌期の業績予想が、この数値よりも少なければ、繰延税金資産が過大に計上されている可能性があり、取り崩しの発生に注意が必要になります。 私も繰延税金資産の額から逆算して、税引前利益がいくら必要かを算出し、過去の実績からその実現性を判断することは、思い浮かんだのですが、会社発表の予想純利益と比較するところまでは、思いつきませんでした。 今回の疑問のきっかけとなったアセット・インベスターズでは、以下のようになっています。 - 前期末の流動資産の繰延税金資産:21.6億円 - 今期の予想経常利益:7億円 (税引前利益は未公表) - 今期の予想純利益 :2億円 21.6億円の繰延税金資産と相殺させるためには、21.6÷0.4=54億円 の税引前利益が必要です。 税引前利益の予想は公表していないため、経常利益を見ますと、わずか7億円です。特別利益を出す予定かもしれないので、ここでは見過ごしましょう。 54億円から、相殺する繰延税金資産である21.6億円を控除すると、32.4億円になります。 すなわち、純利益はこれ以上ないとおかしいことになります。 それにもかかわらず、会社発表の今期予想純利益は、たったの2億円です。 本に載っていた教科書的な説明とは、まったく辻褄があいません。 この会社の前期のP/Lには、法人税等追徴税額(過去に脱税したのか?)という項目があったり、B/Sでは流動資産に未収還付法人税等10億円が載っていたりして、わけがわかりません。 おかしいとまでは言いませんが、少なくとも私にはさっぱり理解できないので、こういう会社には近寄らない方が無難ですね。 ※ 私が理解できないだけですので、株主の方は気を悪くなさらないでください。 ・繰延税金資産の取り崩しは、法人税等調整額で行う 繰延税金資産と相殺できるだけの利益をあげられない場合には、繰延税金資産を取り崩す必要がでてきます。 特別損失にでもなるのかと思ったら、そうではなく、法人税等調整額に繰り入れるようです。 ・繰延税金資産の、株主資本に対する割合 繰延税金資産は、会計上は将来の負担になるべき、支払い済みの税額です。 その意義は、将来の会計上の税額を割り引く(先払いしているだけなので、合計は変わらない)権利であるとも言えます。 現時点での資産価値としての実態はありません。 例えるならば、今月末まで有効なファミリーレストランの割引券のようなものです。 割引券は使った時には金銭的な価値が発生しますが、使わなければ無効になるだけです。 繰延税金資産やのれんなど、実態的な価値がないものによって、総資産が膨れ上がっている場合には、注意が必要です。 膨れ上がった価値が無効になったときには、その分株主資本が減少することになります。 したがって、繰延税金資産やのれん代が、株主資本に対して大きな割合を占めている会社は、実質的な株主資本は割り引いて考える必要があります。 単純にPBRだけ見て、割安だと判断することは、危険です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[会計] カテゴリの最新記事
|