原発「安全神話」の瓦解
民間事故調の報告書は、長年にわたって醸成された原発の「安全神話」が事故の遠因となったとした。規制当局や電力事業者だけでなく、原発立地を受容してきた自治体の住民、ひいては国民全体が神話を受け入れたことで、事故の可能性を論じることが難しい状況が生まれたと指摘する。一方で、イデオロギー的な反対運動が<反作用的>に働き、それを強化する土壌をつくったと分析している。報告書は、安全神話の背景となった2つの「原子力ムラ」の存在に言及した。原子力行政・産業に加え、財界・政界・マスメディア・学術界を含めた「中央の原子力ムラ」と、積極的に原発との共存を選び続けて自らも安全神話を構築してきた「地方の原子力ムラ」だという。報告書は、中央のムラは原発導入の初期、リスクを明示せずに安全性と技術的先進性を強調し、原発を受け入れる素地を作ったが、反原発運動が盛り上がると、さらに神話を強化する方向に動いた……とみる。事業者が事故対策を取れば、反対派が訴える安全性への疑念を肯定することになる。それを否定するため、ムラは「原発の絶対的な安全性」を唱え、事故想定を許さない環境ができたと、報告書は説明する。「原理原則に基づくイデオロギー的反対派の存在が『安全神話』を強化する土壌を提供した」と指摘した。一方、一般の国民についても「原発は複雑で難解な技術的問題として認識され、無知・無関心であることを問題視しなくなった」と、その責任を付言した。報告書は、原発の再稼働ができない状況の中、少なくない地元自治体が再稼働を望む現状も紹介しつつ、「中央の原子力ムラによる、安全対策が不十分なままの原発再稼働と、地方の原子力ムラによる原発依存経済の継続がなされ、一般国民による無関心が続く限り、再び過酷な事故を引き起こす可能性は常に存在する」と警告した。(2月28日産経新聞「安全神話」なぜ)