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ゼロスさんのいた絶望の島を出てから船に揺られること数日・・・
私達は地上世界において唯一、全ての種族がお互いを傷つけあうことなく手を取り合い生活をしているという島、エデンへとやってきていた。 そこは色々な文明・文化が混ざり合ってるからもっとこう、ごちゃごちゃした町並みになっているor閉鎖的な空間で昔の文化が根強く残ってるのかとも予想してたんだけど。そうでもないみたい。 なんか、私達が普通に見ている世界、町並み。人間の文明っていうのかな?それが強い感じに思える。 「ここがエデンなんだね」 「思ってたよりも結構文化が発展してますね」 「そうですわね・・・普通にわたくし達の町とそんなに変わらないくらいには発展しているように見えますわ」 と、そこまで言ってアセトは何かにハッと気付いたように声をあげた。 「あら?魔族・天上人・人間以外にもダークエルフの姿も見えますわね」 私達がやってきたことに対して、もっとこう警戒されるのかとも思ってたけど思いのほか歓迎ムード。 「なんてぇかよ。今まで訪れたどの町よりも、町全体からの暖かさっていうのか?うん、そういう人の温もりっていうのは感じるよな」 「はい、これが本来この世界のあるべき姿なのかもしれません」 「いつか、全世界でここエデンみたいにさ、全ての種族が手を取り合って共存出来るようになるといいよねぇ」 「はい、争い・闘争のない平和な世界がいつの日か訪れる。それを達成させるためには、まずは現状の天上人と魔族の争いを未然に防ぐ。それが大事だと思います」 そんな話を色々としながら街中をグルリと見て回ってた私達。 そこでクレッシルが何かを思い出したかのように言葉をかけてきた。 「なぁ、そいやよ?ウリエルのおっさんが言ってたドラゴンクローってどこにあるんだろうな?」 「あぁ~・・・そういえば、ここにはかつて龍族の勇者バーンの使っていた武器があるといわれていましたね」 「やっぱりどこかに大切に安置されてるのかな?ちょっと聞いてみようか」 町の人達の話によると、ドラゴンクローという武器は今は町の外れにある祠にて大切に安置されているそう。 その祠に安置されてるドラゴンクローをクレッシルはどうしても一目みたい、あわよくば譲って欲しいと思ってるようで・・・ しょうがないから私達は話の中で出て来たこの島の長であるマルコシアスさんの家まで話をするためにやってきた。 「すいませ~ん・・・マルコシアスさん見えられますか~?」 戸を開けて中を覗きながら声をかけると、家の奥からゼロスさんと同じように背中から左右色の違う翼を生やし、長いあごひげを蓄えた中年男性が現れ出迎えてくれた。 彼は私達の姿を見ると、不思議そうな表情を浮かべたけど、すぐに暖かい笑みを向けてくれたんだよ。 「ん、この島では見かけない顔だな。如何様でこられたかはわからぬが、ここは見ての通り何もない静かな島だ。何ももてなしは出来ないがゆっくりしていってくれ」 「えっと、ありがとうございます。私達は世界を旅しているモノで、私の名前はセラフィム=ライトといいます」 「ライト・・・ふむ。かつてサタナエルと戦った七大英雄の1人。ムート=ライトの血の者か」 「マルコシアスさんにちょ~っとだけお話したいことがあって来たんだけど、いいかな?」 「よかろう、立ち話もなんだ。中に入るといい」 中に招き入れられた私達は、リビングにあるテーブルにマルコシアスさんと対面になるように腰掛けた。 「それで、七大英雄の血を引きし勇者達よ。わざわざここ歴史から忘れられた島、エデンまでやってきたその理由とやらを聞かせてもらおうか」 「あ、うん。単刀直入にいうね?」 私が言おうとしたらだよ?クレッシルがくい気味に、興奮した様子で身を乗り出したよ。 「ここにドラゴンクローってすんげぇ武器があんだろ?それを譲ってもらいてぇんだが」 「ドラゴンクローを!?」 流石にいきなりやってきた人間がそんな大切なモノを寄越せなんて言うのは予想してなかったんだろうね。 うん、凄く驚いた表情を浮かべてるよ。 「あれはとても強力な代物だ。何故それが必要だというのだ?サタナエルが倒れた今、それを手にする理由というのはないと思うのだが?それ相応の理由とやらを教えてはくれないか」 「実は今、天上界の最高神であるゼウスが魔族達との戦いをここ地上世界で起こそうとしているのです」 「もう一刻の猶予も残っていないのです。今ゼウスはここ地上世界へ兵力を送り込み、力ずくでこの世界を掌握し、魔族との戦いの拠点しにようとしているのです」 「そんなことになってしまったら、この世界中で普通にただ毎日を送り過ごしているだけの人間・天上人・魔族達といった関係のない人たちが巻き込まれ、沢山の血が流れてしまいますわ」 「そんで、今私達はその戦いをやめさせようとしてる最中なんだ。ただ、この先何があるかわかったもんじゃねぇ。もしかしたら天上人・魔族。そのどちらか・・・いや、最悪両方と拳を交えることになるかもしれねぇんだ。それで、万が一そうなった場合の事を考えて、ドラゴンクローの力を借りてぇ、そう思ってんだ」 椅子に深く腰掛け、腕組みをして目を閉じ、考え込むようにしながら私達の話を静かに聞いてくれていたマルコシアスさんがその瞳を開き、私達の方へと向きかえった。 第47話 地上の楽園エデン その1.終わり その2.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年08月12日 00時09分57秒
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