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テーマ:木枯し紋次郎(185)
カテゴリ:本を読む
帰って来た木枯し紋次郎を読む
男に惚れられる気風のよさと、深みのある人間性がたちまち文吉をして、頭立つ存在にならしめた。文吉は自然に、親分に祭り上げられた。 「紋次郎さんにも、乗ってもらいますからね」 「そいつは、いけやせん。渡世人に蓮台渡しは、不相応にござんす」 半ば甘えるような目つきで、おもよは紋次郎を軽くにらんだ。紋次郎は仕方なく、生まれて初めての蓮台に乗ることになった。 「ねえ紋次郎さん、お前さんにそっくりでござんしょ」 「そうでしょうかね。大の男に餓鬼となると、比べようがござんせんよ」 「おまえさんとあの新吉って子を並べて眺めたら、誰だろうと親子だと思いますよ」 「たとえ生き写しだろうと、あっしにはかかわりござんせんよ」 「お初に、お目にかかりやす。紋次郎と、申しやす」 「お初に、お目にかかりますだと・・・」 「へい」 「それが二十七、八年ぶりにめぐり合った弟が、兄に向かって言うことか」 「兄だ弟だと、勝手に決めねえでおくんなせえ。あっしは、上州無宿の紋次郎にござんす。無宿人には故郷も親兄弟も身寄りも、ありゃあしやせん」 「それ、本気か」 「まして、中尾屋さんは堅気のお人でござんしょう。無宿人なんぞと、縁があっちゃあならねえんでさあ」 ※藤枝(静岡県藤枝市)金谷(静岡県島田市)袋井(静岡県袋井市) ※顔役の語源 ブログランキング★TV お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.10.17 07:34:37
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