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テーマ:木枯し紋次郎(185)
カテゴリ:本を読む
帰って来た木枯し紋次郎を読む
兄弟分だけに久太郎父子の卑怯で酷い仕打ちは許せないというのが、市助流の筋道でもあった。市助は必ず、久太郎と三郎次の命を狙うだろう。それも代人をよこしたり、殺し人を雇ったりはしない。市助みずからの手で、久太郎父子を惨殺しようとする。そうでなければおつなも為吉も成仏しないと、これもまた市助流の道理なのだ。 「あっしも大概は、野宿と決めておりやした。それにしても、長い旅でござんしたよ。もう、二十年になりやしょうか。野宿をするための二十年だったと思うと、何だか滑稽になりやしてね」 「まったくで・・・」 「紋次郎さんも、旅は長えんでござんしょうねえ」 「へい。馬鹿げておりやすんで、数えたことはござんせんが・・・」 「そろそろ、疲れて来たんじゃあねえんですかい」 「疲れようと疲れまいと、旅をするほかに生きざまがねえってえ始末でござんすからねえ」 「無宿ってえのは、そういうもんでさあ。ですがあっしは、すっかり疲れちまいましてね。生臭い生き方をするのが、面倒になりやした」 「そうですかい」 蔦の紅葉が、色鮮やかだった。旅の醍醐味など想像もつかない紋次郎だが、このように広々とした景観に接していると幼い想像を楽しみたくなる。 「おめえさんはおのれを追い、おのれに追われていたんでござんしょう」 「街道はいずこも、変わりござんせん。いささか業腹だろうと、来たばかりの道を引き返すことに致しやす」 ※佐久山(栃木県大田原市)白坂(福島県白河市) ブログランキング★TV お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.10.21 04:42:17
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