耳を平家の怨霊に引きちぎられた耳なし芳一(塩谷智司)、再度、和尚(麿赤児)に身体に経文を描かれ、己の煩悩のあらわれである、冥府魔道にさまよう者達―宮本武蔵、佐々木小次郎、武蔵坊弁慶、なぜかビリー・ザ・キッド、沖田総司、小五郎を乳母車に乗せた子連れ侍(森羅万象)なんて面子と限りない戦いを繰り広げる。アクション監督は香港帰りの谷垣健治さんで、竹藪での竹をしならせての戦いやら香港映画で観たなぁ、と嬉しくなるようなワイヤーアクションを駆使したシーンが次々。特殊造形は原口智生さんで大映的な妖怪も姿をあらわす。さらには大駱駝艦の白塗り赤フンな暗黒舞踏の皆さんもあるときはどんぶらこっこと口々に言いながら芳一めがけて押し寄せてくる荒波、あるときは沖田に率いられ切り込んでくる新選組隊士と活躍。
そのさなかには芳一が琵琶法師となるきっかけであった女(伊藤千夏)があるときは牛若丸として、あるときは芳一ともども操り人形のように荒縄に身を絡めたり、口裂け女や二面女と化したりと姿を表し続ける。
監督、および共同脚本はOZAWA。メイキングではわざわざ顔を映さずの上半身のみでコメントしたりしているが、もちろんそのダミ声、隠すまでなく小沢仁志アニキである(笑)。西部の町では風にあおられ、タンブルウィードがわりにざんばら髪振り乱した生首が転がってたり、沖田の三段突きの男塾クラスの斬新すぎる解釈だの、エル・マリアッチもびっくりの芳一の仕込み琵琶だの随所にアイデアとバイタリティあふれ、いろいろ荒っぽいところもあるけど、キル・ビル第一作などみたいに酒のつまみに適した一作。
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