テーマ:徒然日記(22904)
カテゴリ:技術士
技術士(技術系の国家資格試験合格者)の多くの方々が国際協力機構(JICA:理事長は緒方貞子女史)を通じて、海外での技術支援活動に従事しておられます。
しかし、輸出企業に勤務する技術士の方々が活動するケースが殆どで、実質的には政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)に基づく、当該企業の海外輸出工事となって終わることが多いようです。 ODAは政府の実施機関によって開発途上国または国際機関に供与されるもので、開発途上国の経済・社会の発展や福祉の向上に役立つ為に行う資金・技術提供による協力のことですが、年間予算額が1兆円に達することもあって企業中心の大型工事となります。これは従来悪例とされる、決められた年間予算の使い切りには大型工事主体とならざるを得ず、小額工事は後回しにされてしまうことになります。 大型工事完了後の保守整備等は小額案件ですので、注目を浴びないことから故障しても修理が出来ず、なかなか住民が要望するきめ細かい援助になるには困難が伴う様です。 そんな中、こんな状況を払拭する、企業とは一線を画した、小額にも拘わらず相手政府からも感謝される素晴らしい技術援助が行われました。個人技術士の鏡と思って紹介することに致します。 朝日新聞1月5日夕刊の「世界の鼓動」欄に次の様に記載されています。 アフリカのニジェールは日本の領事館さえ無い貧しい途上国。水道の専門家・松並壯さん(59)は「我が国の技術者を指導し、未解決の問題を解決し、安定した水道事業を確立する為に多大な貢献をされた」と同国から感謝状を受けた。 首都ニアメーには日本の援助で立派な浄水場があるが、故障が多くて半年は使えない。松並さんがJICAから依頼された任務は排水弁の取替え等故障修理だった。8月現地に入り、故障を直したが、これだけでは解決しないと気付いた。排水路を工夫しない限り汚水の逆流がまた起こる。 排水路は援助の対象外、日本の守備範囲を超えていた。個人の資格で滞在を延長し、ニジェールの技術者と力を合わせ、浄水場を修繕するという難工事を成し遂げた。感謝状には「我が国関係者の人格を尊重し、技術力を評価した」となっている。 彼からの年頭の挨拶メールは下記の様に書かれていました。 JICAの水道専門家として、昨年8月から3ヶ月間アフリカニジェール国に派遣されました。ニジェールは、国連が2000年に調べた資料で、世界最貧5ヶ国の一つ(平均年収250$=72円/日)です。先進諸国と異なり物と金で汚されていない多くの人々が住むニジェールは、私にとっては素晴らしい国でした。 ニジェールには日本大使館がなく、成田からパリ経由往復5日を要する陸の孤国で国際情報社会から閉ざされています。おかげで嫌なニュースが耳目に入らない国での心安らかな3ヶ月間をすごしました。 業務は、竣工翌年より最長半年間も稼動できなかった浄水施設の最終運転指導でした。浄水場に通う以外にすることがないので、土日も含め一日も休まず「水は命」のスローガンを掲げて改修工事をしました。その結果365日稼動できるように、更に設計能力以上に稼動する施設になりました。それは、全てニジェール人の智恵、努力と汗の結晶によりなしえた仕事の結果でした。 ところが思いもかけず、帰任に際し「松並は、ニジェール人の人格と能力を認め指導し、今まで不可能であった施設の完全復旧を遂げた」とのことでニジェール政府(大臣)より感謝状を賜りました。まさに、技術士たるコンサルタント冥利に尽きるもので、そのお蔭様で、この一年が思いもかけず自分にとっては、素晴らしい一年となりました。 聞くならく、ニジェールの担当大臣からは「貧しい国で何のお礼も出来ずに申し訳無い。せめて感謝状を受け取って欲しい」とのことですから、良い話で、これ以上の国際貢献はありますまい。 彼が嫌なニュースと言っていますのは、彼は特殊法人改革の旗手として監事・理事を歴任していたのですが、守旧派の巻き返しにあって、この海外活動中、本人欠席の臨時総会決議によって除名処分とされてしまったのです。 名誉毀損の刑事告訴が妥当と私は思っているのですが、彼は泰然自若として動きません。やはり、小事には動じない「大人」君子の様です。 本人欠席の臨時総会の顛末についてはこちらをご覧ください! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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