[地域]の記事一覧 | 「遊び」と「学び」の交差点

隅田川ぶらり散歩－スカイツリーと東京の「記憶」

立春も過ぎ、暖かさを感じる一日、「隅田川」沿いを散策してきました。隅田川西側から見る東京スカイツリーは、朝日を背に燦然と聳え立っていました。その天を突く雄姿は、あたかも「東京の未来」を思わせるが如く周囲の高層建物と調和しています。川の両岸には、有名メーメーカーの本社社屋や高層マンションが建ち並び、高速道や鉄橋など、東京を支える底力を感じさせます。実は、スカイツリーと隅田川、そして撮っておきたかった橋があります。こちらです。西側にある東京ガスのガスタンクが目印となっている「白髭橋」（奥に見える橋）です。荒川区南千住及び台東区橋場地域と墨田区堤通を結ぶ明治通りにかかる橋です。近くに「言問橋」があり、古くから渡しがあった地とされ、「伊勢物語」東下りで主人公が「名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」の歌を詠んだのはこのあたりとされています。（橋の近くにある「ガスタンク」と「白髭神社」）その「白髭橋」にまつわる「悲しい記憶」を改めて思い出したのでここに書き留めておきます。東京の重たい「記憶」の日は昭和20（1945）年3月10日です。「東京大空襲」の記憶です。死亡・行方不明者10万人以上と言われ、一夜にして、東京市街地の東半部、実に東京35区の3分の1以上の面積（約41km²）が焼失したとされています。特に、下町地区の被災状況は想像を絶する惨状であったことは今も語り伝えられています。あの日、この橋の上で時を過ごした方（私の親戚）から聞いた話です。Ｂ29の焼夷弾により既に火の海となった浅草地区の人々は、大川（隅田川）へ避難を始めていました。川の近くには防火帯もあり、少し火の手が少なく見えたと言います。しかし、逃げる橋は限られています。その時に頭をよぎったのは「白髭橋」のガスタンクだった、「あれが爆発したら周囲一帯は全滅する」と。そこで、「白髭橋」を避けて逃げた人が多く見えたそうです。しかし、その方の家族は運を天に任せて最も近い「白髭橋」へと向かいました。「爆発したら命はないが、今はそこにかけるしかない」と、じっくり考える間もなく、とにかく橋へたどり着きました。どうにか橋の近くに避難することができ、そこで朝を待って、川と町の惨状に驚かされることとなったそうです。他の橋は人で溢れ、火の暑さと人の殺到に絶えきれず川へ飛び込んだ人は、溺死または焼死、飛び込まなくても人に押されて圧死した人もいたそうです。逃げ遅れれば確実に焼け死んでしまう、かといって橋に逃げても人で溢れ、川に入っても生き残れない。助かった人たちは、こんな状況で生き残れたことが奇跡に思えたそうです。この「白髭橋」と川岸の「ガスタンク」。ここでは、あわや爆発かと命を託した結果、爆発せずにすんだため命をとどめた方が多かったそうです。空襲の惨状は「東京大空襲」記念館や写真集で見ることが出来ます。江戸東京博物館にも、東京の歴史の一つとして展示され、現代の人々に訴え続けています。その一端とは言え、「白髭橋」と「ガスタンク」を見ると「忘れ得ぬ悲しい記憶」を思い出します。こうした歴史の上に今の東京を象徴する「スカイツリー」と東京の未来があることを再確認しつつ隅田川を眺めていました。さて、その後ぶらりと隅田川沿いを下流に向かって散策しました。いくつか、目に付いたものを載せておきます。隅田川は、生活や産業を支える川として今も大活躍しています。大きな船を引いて走る艀（はしけ）や漁師さんの釣船、観光のための屋形船は数え切れないほど目にしました。交通の便としての水上バスの他、観光船もいくつか目にしました。こんな面白い形の船もありました。しばらく下ると、小名木川との合流地点、そこにはあの「松尾芭蕉」の旧跡があります。「芭蕉記念館」のほか、「芭蕉庵跡地」「芭蕉像」が近くにあります。（芭蕉庵旧跡）ここは、大正時代の大津波で発見されたそうですが、その時に出てきた「蛙」があったそうです。もしかして、写真にある碑の下にいる蛙？「古池や蛙飛び込む水の音」で「蛙」と芭蕉は深い結びつきがあるのです。旧跡の近くに、隅田川を見下ろす芭蕉像がありました。（隅田川を望む芭蕉像）杉山杉風（すぎやま‐さんぷう）［1647～1732］が描いた原画を模写した資料に基づくもので、かなり「本人」に近いそうです。杉風は江戸中期の俳人で蕉門十哲の一人。江戸の人。深川芭蕉庵の提供など、芭蕉を経済的に援助した人として知られています。それにしても、気むずかしそうな顔をしている芭蕉ですね。しばらく下って、今度は東へ「仙台堀川」から「横十間川」へと歩きました。そこで、「和船」を漕いでいる船頭さんを発見。どうやら観光のための和船のようです。江東区には「和船友の会」があります。ＨＰ→「和船友の会」には「櫓・櫂による和船の操船技術、並びに和船の維持管理方法を後進に継承し、活動を通じて会員の親睦と地域社会の活性化に資する事を目的として東京都江東区横十間川親水公園をベースに活動しています」とあります。「和船を漕ぐ」手こぎ体験もできるそうです。東京の川で「和船」を楽しむ。「粋」な感じがします。そういえば、川の北側を見ると番地が「海辺」とあります。この辺りは海だったのかと思うと、広々とした「江戸前」の海と「和船」が目に浮かびます。いつの間にか平成、昭和から江戸時代へと時代が遡ってしまう、「東京」は「粋」な江戸を感じさせる場所でもあったのです。

温泉を「造成」しています－ぶらっと箱根散歩　その２

前回「箱根の名物博物館」の続きです。入生田にある「生命の星・地球博物館」を出たあと、山の美しさを眺めるため「ターンパイク」を通って「大観山」へ向かいました。途中、相模湾に浮かぶ「初島」「伊豆大島」をはじめ、「利島」「新島」も見えました。（初島と大島）富士山は「笠雲」がかかっていましたが、これも乙なものです。（大観山から見た富士山）山の稜線が綺麗です。富士山は宝永の噴火口までくっきり見えて、すぐ近くに大きく聳え立っていました。自分が小さく感じられる瞬間です。さて、そこから外輪山の周囲を回って「山伏峠」へ到着。山伏峠にある「絶景」と書かれた看板に沿って上に昇ると、まさに「絶景」でした。（二子山と麓の箱根園）芦ノ湖の湖面は海賊船をポイントに置き味わいある景観を作り出していました。箱根の眺めはゆったりしていて時間を忘れさせてくれます。反対側にからは駿河湾が一望できます。（三島・沼津市街地と駿河湾）山だけでなく海も輝いていました。そこからさらに逆側へ回って一番の観光名所「大湧谷」へ向かいました。（火山ガスの噴煙が激しい大湧谷）そこで今回話題の「温泉造成施設」を見学しました。大湧谷の向かって左側に「観察所」が設けられています。（中央にある出っ張った施設がそうです）写真の奥に建設中の施設が見えます。間もなく、「新しい大湧谷の施設」が誕生するそうです。そこで見た「温泉造営施設」がこれです。分かりにくいので「やぐら」を拡大してみます。これが「温泉の造成塔」です。大湧谷は山の一部が「山崩れ」を起こしてできた斜面なので、地中の火山ガスがいまだ多く吹き出しています。その地中から噴出する火山ガスに水を加えて人工的に温泉を作っています。できた温泉を近くに貯水して「発揮（はっき）」というガスを抜く工程を経て温泉施設へ供給されるそうです。実は、箱根の温泉のうち、30％がこうした造成温泉なのだそうです。温泉というと地下深く掘削して湧き出た源泉を薄めたり湧かしたり加減して引いているものだと思っていましたが、箱根では今も多くの温泉が「造成」されているのです。箱根の残り70％はいわゆる「地下堀り」の温泉なので、一般的には普通の温泉です。なお、この大湧谷で造成される温泉は「造成温泉」の3割を占め、多くは仙石原や強羅などへ供給しているそうです。箱根温泉全体の約1割が大湧谷で「造成」されていることとなります。人工的に温泉を造るというと、偽物っぽいですが、そんなことはありません。一般の温泉も雨水が溶岩を浸透して地中のマグマと合わさり火山ガスや源泉となっているのです。その工程を人工的に作り出しているもので、成分や効能に違いはないわけです。箱根に行ったら是非この「温泉造営塔」をご覧になって、「今夜の温泉ができていくなあ」など、考えてみても面白いですね（実際は違うわけですが…）。ちなみに、箱根には前回ご紹介した「生命の星・地球博物館」に隣接した「神奈川県温泉地学研究所」という研究施設があります。箱根を中心とした多くの地点で温泉や塚水の水位、地震の観測をしてる研究機関です。この研究所によって、温泉や地下水が保護され、地震のデータを収集、分析して防災に役立てているのです。webページでは「箱根火山の最新地震情報」も提供しています。神奈川県温泉地学研究所webページ　神奈川県にとって「温泉」は単なる観光資源だけではなく、防災や研究に役立てられていることも改めて感じました。ぶらっと散歩で「遊び」ながら、少し「学び」にふれた「箱根」の話題でした。日本ジオパークに認定された箱根、これからますます観光客が増えて盛り上がっていくことを願っています。そういえば、もうすぐ「箱根駅伝」です。ランナーが走る前に箱根を散歩してみるのも一興ですね。

箱根ジオパーク記念「楽しい博物館」－ぶらっと箱根散歩その１

2012年９月、ついに「箱根」が「日本ジオパーク」に認定されました。箱根ジオパークwebページ　そこで、箱根へ日帰り小旅行に行ってきました。是非とも行きたい「名物博物館」をじっくり見学（その１）。箱根ならではの「温泉造成」の現場もご紹介します（その２）。まずは「博物館」です。小田急線入生田駅すぐ近くの「神奈川県立生命の星・地球博物館」です。（小田原から三駅の入生田駅下車徒歩3分です）（外観からしてユニークな博物館）「生命の星・地球博物館」は、県立のため「中学生以下無料」で入館できるほか、一般の方も低めの料金設定になっています。また、サービスデーや箱根フリーパスの割引など各種割引も多数あります。お金の話をしたのは他でもありません。「え～、この値段で、こんなにすごいものがたくさん見られるの！」と驚く展示がたくさんあるからです。2～3時間はじっくり展示を眺めていて飽きることがありません。いきなり庭には迫力ある岩石がごろごろと置いてあり、よく見ると相当貴重なものです。館内1階には「砂漠のバラ」や「紫水晶」「牙のような結晶をもつ方解石」など普段見られない「美しい石」がとにかく豊富です。また、恐竜骨格や野生生物、植物から珍しい蝶や昆虫の標本など、面白い実物がたくさん展示されています。今回私が興味深く見たは「レインボーアンモナイト」（美しい！）と「雌雄差のあるヨナグニサン」（体の右半分が雄、左半分が雌でできていて不思議？）です。来館の折には探してみて下さい。他にもレアな「掘り出し物」がたくさんあります。展示の方法も工夫されているので、見回しながら人類等の誕生・進化が実感できます。マニアでなくても見ているだけで楽しい展示です。2階には神奈川県の地学的な歴史（地質から見た地形変動）のほか、県内の動植物、魚類が数多く展示されています。ナウマン象の化石（神奈川にもいました）や、骨格標本は見応えがあります。かつては県内に生息していた絶滅種「ニホンオオカミ」の標本まであります。また、「人類がしていること」として、産業の発展と生物多様性への影響を分かりやすく展示解説してあります。話題の「生物多様性」について、つい考えさせられます。この辺は、かなり教育的配慮が感じられて、小学生の見学を意識しているようです。「社会科」ならぬ「理科見学」に訪れる小学校も多いそうです。ちなみに、3階にはレストランもあり、「小田原御膳」や「アジフライ定食」など、地元の料理をゆっくり味わうことができます（私も利用しました）。まだまだありますが、一部写真付きで次のリーフレットをご参照下さい。「生命の星・地球博物館」の公式webから、少し説明を載せておきます。平成7年（1995年）3月、横浜馬車道の神奈川県立博物館（現：神奈川県立歴史博物館）の自然史部門が独立する形で誕生し、平成24年8月3日をもちまして500万人の入館者をお迎えすることができました。展示のほか、自然に関する調査・研究、資料の収集・保管、これらを生かした講座や観察会などの学習支援活動をしています。開館からすでに17年が過ぎていますが、常に展示は「進化」しています。それゆえ、今年8月に500万人とありますが、まだまだもっと入館者数が増えてもいいと思います。ぶらっと小旅行を思いついたとき、近場の箱根でのんびり「学び」を楽しんでみてはいかがでしょう。特に、お子さんの「遊び」に加えて、少し「学問」に触れさせたいという方、箱根をきっかけに「美しい自然」と「自然の大切さ」が実感できる「名物博物館」をぜひ訪れてみて下さい。以下、ぶらっと箱根散歩その２「箱根の自然と温泉編」に続きます。

Yokohamaに照る月－「みなとみらい」をちょっと散歩

今日は、横浜「みなとみらい」へちょっと散歩に行ってきました。夕方、きれいな月が顔を見せた光景。出たばかりの月が、ほんのり明るく輝くさまが印象的でした。お昼過ぎ、桜木町駅を降りると、横浜を巡る100円バスが止まっていました。その名も「あかいくつ」、そのままです。さすがは観光の街、名所巡りには便利ですよ。さて、駅から海へ向かって散歩、みなとみらい地区へ向かいました。途中、横浜らしい景色がありました。ここを通って、赤レンガ倉庫へ着くと、大きなイベントが目に入りました。何と「横浜農業の採典」、ＪＡ横浜が主催です。横浜は「港の街」という印象が強いですが、実は、通称「山の横浜」と呼ばれる広大なエリアがあって、農業も盛んなのです。運輸・倉庫・漁業に観光、そして農業の「横浜」なのです。参考web（pdfファイル）→「横浜農業の採典」とても大勢の人で賑わっていて、何と、地元のテレビ取材も来ていました。（カメラマンと記者が「芋掘り体験」の取材中です）その他、「ミレットマンショー」なるヒーローショーもあり、子どもにも（これは？で、実は見ている大半がお年寄りでした）好評なようです。訳すと「雑穀男」、好き嫌いをするとパワーが落ちます。好き嫌いをせずに悪者を打ち倒せ、という分かりやすい内容でした（しっかり観ているところが何とも…年甲斐もなくヒーローショーには釣られてしまいます）。（ミレットマンと悪者レンジャー）その他、横浜のブランド豚や、卵・野菜など即売・試食があり、お店もたくさん出店していました。すぐ隣の海には「海上保安庁」の巡視船が停泊。領土問題をめぐる漁業の行方、都会での農業の将来が隣り合っていました。横浜港にも（当然ですが）大きな海上保安庁があるんですね。そんなこんなで歩いていると、道にこんなマンホールが。よく見ると「Port of Yokohama 1859」とありました。そういえば、ついこの間、開港150周年記念で盛り上がっていました。お腹がすいたので、「横浜ラーメン」を探すと、ワールド・ポーターズ１階に「重厚中華そば」の店「大ふく屋」を発見。「野郎ラーメン」という、いかにもガツンときそうななラーメンを食べました。（「極上つけめん」の店「大ふく屋」）醤油味が重厚（濃厚ですね）、麺がすでに着色されていました。濃い味のラーメン（煮干しダシ系醤油味）の好きな方にはおすすめです（私は、血圧が上がりそうで、ちょっと「濃いめ」過ぎました）。（その名も「野郎ラーメン」がっつり男の味でした）次に、クイーンズスクエアからランドマークタワーへ。途中、「あれっ」とする景色に遭遇。「みなとみらい駅」です。エスカレーターを降りていくと、何と、下に「駅」が丸見えです。駅のホームへ降りていくようで不思議な感じです。見ているこちらも変ですが、電車を待って上から見下ろされているのもどうなのでしょう。最近、この辺へ来ていなかったので、もはや古い話題かもしれません。しかし、「上から丸見えの駅」は珍しいのではないでしょうか。最後に、ランドマークタワーの夕景。すぐ真下で撮ってみました。今日は秋の散歩日和（ちょっと風は強かったですが）。農業が盛んな「横浜」、面白い駅のある「みなとみらい」。そんな散歩で見つけた地域の話題でした。

秋の彩り－「代々木公園」をちょっと散歩

昨日ご紹介した「江戸の判じ絵～再びこれを判じてごろうじろ～」という企画展を見に行くついでに、さらに公園通りを突っ切り、ＮＨＫの横を抜けて「代々木公園」を散歩してきました。平日の日中で、しかも天気のいい日でした。ランナーが多く、気持ちよさそうに風を切って走っていました。その横には、私のような「あやしげなおじさん」と子連れのお母さん達が何組か公園を楽しんでいました。渋谷口近辺で「バラの咲く庭」がありました。（携帯電話で写したので小さくてすみません、以下同じです）上の写真は小さくて分かりにくいですが、色とりどりのバラがたくさん咲いていました。また、小さな植え込みでは、色とりどりの花が「秋の彩り」を見せていました。東京といえば「渋谷」、昼夜を問わぬ賑わいを見せる繁華街をほんの10分ちょっと歩いただけで「別世界」でした。大木が多く、ゆったりと草花が植えられて広々とした「公園」は、ちょっとした「里山」を思わせるところもありました。この写真など、後ろには立派で大きな木が悠々とそびえています。「代々木公園」はかなり広大で全部を歩くことは出来ませんでしたが、さっきまで見ていた「渋谷」の情景と緑豊かな景色とが隣り合わせで面白いなあと思いました。しかし、ニューヨークにしても、すぐ隣の新宿にしても、すぐ横に大きな「公園（緑地）」があります。それを考えると、都会の「公園」は、都市部に残されている「人工物」のような気もしてきて、何となく「もったいない」「公園の緑たちが気の毒」な気がしました。「もっとはっきり自然と人間との棲み分けをすればいいのに」とも思いますが、こうして「人工の自然？」を残すことも、大切なことなのでしょう。私は、比較的緑の多い住宅街に暮らしています。いつも「人間の周りに緑がある」と感じていますが、「代々木公園」を歩きながら、ここは「緑の周りを人間がうごめいている」ところなのかなあ、と考えていました。こんな言い方をすると、都会の方が「緑が中心」という気がしますが、「自分の周りに緑がある」と実感することと、「緑の周りに自分がいる」という感じ、どちらがより「自然な」感覚なのでしょうか？どちらも人間と自然との関わり方なのでしょうが、ふと「都会の緑」に触れて、そんなことを考えてしまいました。「都会の緑」を考えながら、わずかながら「秋の彩り」を感じることが出来た一日でした。これから「秋の草花」や「紅葉」が見頃を迎えることでしょう。渋谷に遊びに行った際には、少し足を伸ばして「目の保養」をしてみてもいいかもしれませんね。

柿生の里－日本最初の甘柿「禅寺丸柿」

柿のおいしい季節です。（柿は甘くて体にもよい秋の味覚の代表ですね）柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺明治28年10月26日、奈良を訪れた正岡子規は、柿の歌を何句も詠んでいます。【豆知識】この句にちなんで「10月26日」を「柿の日」というそうです。ただし、子規のように柿の実を好んで食べてるようになったのは、そう古い話ではありません。今回は、こうした柿の歴史とふるさとに関わる話題を少しご紹介します。柿の歴史は古く中国まで遡り、西暦５３０年には栽培されていたそうです。日本には、奈良時代頃に中国から伝わってきたらしく、『古事記』『日本書紀』などでは柿は地名、人名として現れます。日本の気候が柿を栽培するにあたって非常に適していたことで、日本全国にあっという間に広まったといわれています。そして現在、日本には約１０００種もの柿があるとまでいわれています。古来、柿の実は食用ではなく「渋柿」を「干し柿」として保存食にしたり、「柿渋」が染料や防腐剤として利用されてきました（紙に塗って防水加工にも使われていたそうです）。例えば、「柿の衣」は僧侶や山伏の象徴とされました。【豆知識】柿渋で初めた服は「柿衣」と書いて「カキソ」と読みます。また、「柿の木」は一部、家具として用いられますが、加工がやや難しく割れやすいため、建築材としては装飾用以外にはほとんど使われていなかったようです。さて、その柿の果実が食用となった歴史が残っています。日本最初の甘柿とされる「禅寺丸柿」の登場です。由来は「鎌倉時代前期にあたる建保2年（1214年）に、星宿山王禅寺の山中で発見された、日本最初の甘柿とされている。」とあります（「麻生観光ガイドブック」）。この「王禅寺」から「禅寺丸」の名がつきました。（禅寺丸柿はすこし小さめの柿です）「禅寺丸柿」は神奈川県の川崎市北部にある「麻生区」の名産品とされ、川崎市のＨＰ等で紹介されています。（王禅寺と禅寺丸柿）その原木は市の指定文化財に指定されているほか、平成19年7月26日には「禅寺丸柿」が国登録記念物として登録されています。以下、歴史の続きです。しかし、発見から約150年後の応安3(1370)年、新田義貞の鎌倉攻めの兵火を被り王禅寺は消失します。その後、朝廷は等海上人に王禅寺の再建を命じました。等海上人は再建の用材を求めて寺の裏山に入り、柿の熟しているのを見つけ、あまりにも美味であったため、持ち帰り、村人に接木をして栽培させるとともに、近隣にも栽培を広めていったと伝えられています。そして、約100年後には横浜地域や南多摩地域にも栽培は広がったそうです。「禅寺丸柿」は江戸時代、江戸への出荷が増大して近隣一帯での栽培記録が残っています。そして明治時代になっても地域の特産品として出荷は隆盛を極めました。この時代に「柿生村」という広域村落名が採用されたことでも、「禅寺丸柿」が地域の主要産業であったことがわかります。明治42(1909)年10月には、「禅寺丸柿」が明治天皇に献上されているそうです。しかし、その隆盛も昭和初期まで、戦後は柿の品種改良などで甘柿の品種も増え「禅寺丸柿」は急速に減少しました。その後、昭和40年代後半以降になると市場へはほとんど流通しない「幻の柿」となっていきます。但し、本家本元の王禅寺や地元の旧農家の庭先にはかつての「禅寺丸柿」の原木が残っていました。今では地元保存会で苗木の配布をしたり、「柿ワイン」など加工品も工夫されて地元の特産品としてよみがえりつつあります。小田急線には「柿生」という、そのものズバリの駅があるのです。まさに「柿の生ふる里」の地名が駅名に残っています。（小田急線柿生駅）その他、小中学校の校名ともなっていますが、残念なことに行政の地名としては「麻生」に代わり、残りませんでした。但し、「柿生隧道跡」や「柿生緑地」など、地域では今も親しまれている「柿生」という言葉です。さて、そろそろ「禅寺丸柿」が食べられる季節ですが、どこで手に入れられるかというと…。残念ながら通販では入手困難です。ただし、地元の農協直売所や、スーパー、柿生駅前の八百屋などで手に入れることは出来ます。また、「ＪＡセレサ川崎」で調べると、「柿ワイン」などの販売情報が得られる場合があるそうです。これから山々が美しく彩られる紅葉の秋です。柿生駅からは散歩道が連なり、里山の自然を味わいながら王禅寺まで歩くコースも設定されているようです（詳しくは麻生区のＨＰ等をご覧下さい）。東京近郊の方は、秋のハイキングがてら、一度「日本最古の甘柿を訪ねる小さな旅」を検討してみてはいかがでしょう。柿生駅は新宿から小田急線で30～35分（快速急行・急行利用）です。以上、地域の話題（その１）でした。