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アロマ・ハーブ・エサレン®マッサージ・・・この楽しき日々

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2010.07.26
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カテゴリ:香り






りょうりょうと風が吹き渡る夕暮れの野を、
まるで火が走るように、赤い毛なみを光らせて、
一匹の子狐が駆けていた。








こんな書き出しに、胸をぎゅっとつかまれて、あっという間に物語の世界にもぐりこんでしまいました。
出入り口はあちこちにあるけれど、まぎれもなく、そこは別世界。
読み終えるまで約8時間、ごはんも仕事も忘れるほどの、離れがたい世界でした。

狐笛のかなた」は、児童文学ですが、大人でも十二分に楽しめる一冊です。
まっすぐな心と捨てきれない夢を持った大人なら、なおさらのこと。


紙の上で文字が語る物語を目でたどりつつ、脳裏にうかぶ映像には、匂いや音が立体的に添えられていて、登場人物といっしょに「この世」と「あわい」を行ったり来たり…

匂いオタクの私には、全編に漂う植物の香りが、特に印象的でした。
暑い日の噎せ返るような草の香り、呪者の焚く香の匂い。
芽吹いたばかりの瑞々しい木々の匂い、畑を耕す時の土の匂いなど……
様々な匂いが物語を効果的に演出しています。

上橋菜穂子さんの代表作「守り人シリーズ」では、異国(架空)が舞台ですが、「狐笛のかなた」には、土着の匂いが漂います。
舞台は、かなり古い、鉄砲伝来以前の日本。
私たちの国の自然の豊かさがふんだんに描かれ、物語を美しく綾どっています。

ヨーロッパに魔女がいて、北欧にトロールやエルフがいるように、日本にも「聞き耳」の才を持つものや、「霊狐」のように霊力をもつ霊獣がいて、自然と動物、そして人間の関係が濃密で、その境界線さえあいまいな時代が確かにあったのでしょう。

どの登場人物も魅力的なのですが、やはり私は、霊狐の野火(のび)が一番好きです。
彼を通して、人の心を持つことの、素晴らしさと切なさを、あらためて感じました。
「聞き耳」という特殊な才をもった小夜と、野火の出会いから物語がはじまります。
湿り気をおびた土や草の匂いがする、哀しくて美しい風景は、宮沢賢治の世界と重なるところがあるかもしれません。

あらすじはあえて書きませんが・・・
週末の一晩があれば、読み終えることのできる1冊です。
ぜひ手にとって読んでみてくださいね。












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Last updated  2010.07.28 01:30:34
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