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まいかのあーだこーだ

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2021.08.22
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カテゴリ:東宝シンデレラ
NHK「メロディーは時をこえて〜歌いつぐ筒美京平の世界〜」を見ました。
今年の3月にBSで放送された番組だったようです。

この中で、武部聡志が、
「卒業」は「木綿のハンカチーフ」の前日譚(=エピソード0)として作られた。
…という趣旨のことを言ってました。

とはいえ、
もともと武部の発言には記憶ちがいも多いので、
あまり額面どおりには受け取れないって気もするし、

この「木綿」と「卒業」の関係については、
すでに音楽惑星さんのサイトで私見を話したのですが、
その考えはいまでも変わりません。



まあ、
こればっかりは松本隆に聞いてみなきゃ分かりませんが、

かりに「木綿」の前日譚を作るのが当初のコンセプトだったとしても、
70年代の歌謡曲の前日譚が、
同じ主人公のまま80年代に作られるなんてことは、ありえないと思う。

なぜなら、時代が違うからです。

とりわけ70年代の女性像と80年代の女性像とでは、
大きな変化がありました。
その違いを反映させないまま歌詞を作るなんてあり得ない。



70年代の太田裕美、
すなわち「木綿のハンカチーフ」の主人公は、
純朴で、慎ましくて、
男性にも、そして自分自身に強いられた運命にも、
なかなか逆らうことができないような弱い女性です。

失恋しても、せいぜいハンカチを送ってもらって、
人知れず健気に泣くしかない。

おそらく彼女にとっては、
地元の誰かとお見合いして結婚するのが残された道だったと思う。



しかし、80年代の斉藤由貴、
すなわち「卒業」の主人公は、
もっと我が強くて、物事をクールに悟っています。

実際、80年代ともなれば、
たとえ地方に残った女子であっても、
短大に進んでから就職することも出来たし、
みずからの人生を選択して切り開く可能性はずっと増えていた。

たしかに男性は男性で、
東京の都会で楽しく暮らしたかもしれないけど、
女性だって負けず劣らず、
よくもわるくも都会化してしまった地方の町で、
それなりの享楽的な生活を楽しむことも出来たのです。

ただハンカチをもらって泣いているだけではないし、
涙こらえて着てももらえぬセーターを編んでるだけではない。

それが80年代という世相であり、
その時代を生きようとする女性のあり方だったと思います。




ちなみに、
今回の番組に参加したのは、
武部聡志、松尾潔、亀田誠治、本間昭光のアレンジャー4人。

まあ、関ジャムに出てくるような面子なので、
「筒美先生は仕事が早かった」
「仕事量も多かった」
「イントロが素晴らしかった」
「歌手に合わせた曲作りをしていた」
…といった職人的な視点からの議論が中心になっていて、

それほどの目新しい話はありませんでした。

唯一、亀田誠治だけが、
筒美の「プロデューサー」としての側面に言及しようとしましたが、
そのテーマをこの4人で深めるには、ちょっと限界がありました。



今後、筒美京平を語る場合には、
たんに作・編曲家としての面だけではなく、
タレントを育成した「プロデューサー」の面から捉えなければならないし、

もっといえば、
南沙織と郷ひろみ以降の、
すなわち70年代以降の「アイドル文化」そのものを仕掛けた、
酒井政利、ジャニー喜多川にならぶ黒幕としての側面から、
つまりは広く文化史的な側面から捉えていかなければなりません。

奇しくも、
現在のような昭和歌謡リバイバルのさなか、
ジャニー喜多川は2019年に、
筒美京平は2020年に、
酒井政利は2021年に、相次いで亡くなっています。

彼らはたんに音楽を変えただけでなく、
日本のメディア文化と大衆文化それ自体を大きく変えたのであり、
日本社会に生きる男性像や女性像までをも確信犯的に変えたのです。

日本人の生き方を変えてしまったとさえ言える。



また、
筒美京平を作・編曲家として語る場合にも、
たんにロックやソウルとの関係を語るだけでなく、
まずはジャズとの関係から掘り起こさなければなりません。

その意味では、
服部良一や、中村八大や、宮川泰の後継に位置しているはずです。

そのうえで、
リズムやメロディやサウンドを筒美がどう刷新したのか、
ようやく冷静に議論できるようになるはずですが、
残念ながら、それについて語れる人材は、
いまの音楽業界にはほとんどいないと言っていい。

なぜなら、ジャズの素養が本質的に欠けているからです。

しかし、
そのことを冷静に捉えないと、
またしても無根拠な「神話」ばかりが量産されてしまいます。

昭和歌謡は、けっして筒美からはじまったわけではありません。


司会:柘植恵水アナウンサー
出演:武部聡志/松尾潔/亀田誠治/本間昭光

亀田:この京平先生と松本隆先生のコンビが生み出す名曲の数々って、何かね、どこかでこうお互い曲と曲がバトンを渡し合ってるような感じがあって、これ「卒業」とかも繋がってませんか?
武部:「卒業」は「木綿のハンカチーフ」の続編というか、「木綿のハンカチーフ」の主人公たちが卒業するシーンを描いてるんです。
柘植:えっ?そうなんですか?
武部:その学生時代どうだったかっていう。
松尾:だから「エピソードゼロ」みたいな。
武部:そう。…が「卒業」なんです。
柘植:つながって…
武部:それを作ろうって隆さんが思って作った曲なんで。
柘植:へえ~。ちょっと「卒業」も強気な女の子じゃないですけども、「卒業式で泣かないわ」みたいなこう。「さみしい」を前面に出す感じではない。
武部:その後「木綿のハンカチーフ」のストーリーになるんですね。


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最終更新日  2024.06.20 06:28:18


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