カテゴリ:ドラマレビュー!
テレ朝「終りに見た街」を見ました。
軽さと重さの絶妙なバランスに乗せられて、 あっというまの90分でしたが、 終盤はトラウマになるほど怖かったです。 ◇ それにしても、 最近のクドカンの多作ぶりに驚かされる! オリジナル作品も、 黒澤明や山田太一のリメイク作品も、 縦横無尽に高い水準で書き上げてますし、 社会的な題材にも臆することなく、 きっちりとエンターテインメントに仕立ててる。 そのうえ、 俳優の魅力を引き出し、 新人俳優の才能も発掘して、 なにやら大谷翔平みたいな、 オールマイティな天才ぶりを感じさせます。 かつて日本にこんな脚本家がいたかしら? ◇ クドカンに欠けてるものがあるとすれば、 映画分野の成功と国際的な評価なのよね…。 坂元裕二が、 是枝の映画で国際的な評価を得たように、 クドカンを世界に引き上げる演出家が必要だね。 真田広之の「SHOGUN」の成功もあったし、 日本のドラマが世界に出る機会は増えるはず。 ちなみに、 山崎貴は「オッペンハイマーのアンサー」を撮ると言ってるし、 ジェームズ・キャメロンは「二重被爆」の映画を撮るらしい。 日本の脚本家もそういう題材で世界に出るべきかもしれません。 ◇ …てなわけで、 今回のドラマの内容についてです。 いちばん怖かったのは、 子供たちが戦争に生き甲斐を見出していくところ。 そして、 1945年の終戦を乗り越えれば、 平和な現代へ戻れるはずだという安易な期待が、 もっとも最悪な形で裏切られるところです。 … 敗戦が確実に予見できる状況なのに、 男の子だけでなく、女の子も、 なおも日本が「勝つ可能性」に賭けて、 お国のために戦うことを決意する。 いくら親が説得しても話が通じなくなる…その怖さ。 幼き日の母(三田佳子)も、 勇ましい兵隊さんに恋心を抱いてる。 ドラマのなかでは敏夫(堤真一)が、 「若者は感化されやすいからね」と言ってて、 ネット上にもそういう見方はあるのだけど、 これって若者だけの話じゃないよね…。 ◇ 事実、 80年前の太平洋戦争では、 総力戦研究所の分析にもとづいて、 《日本必敗》のシミュレーションがあったにもかかわらず、 指導者たちは「勝つ可能性」に賭けて開戦へと踏み切りました。 国の指導者でさえそうなのだから、 一般の無知な国民ならなおさらです。 勝つ可能性に賭けて戦おうとするに決まってる。 「勝てるかもしれないではないかっ!」 「なぜお前たちは戦わないのかっ!」 「なぜ戦う前から諦めるのかっ!」 と言いはじめるに決まってる。 現時点でさえ、ネトウヨなどは、 そういうことを日頃から言ってるわけです。 ◇ そういう人たちに対しては、 もはやいくら説得したところで話が通じない。 彼らは国のために戦うことへ前のめりになる。 戦うことに生き甲斐を見出す連中がいるかぎり、 戦争を止めることは不可能になってしまいます。 それは、たとえば、 過去に戻って3月10日の大空襲を予言し、 当時の人々を助けることよりもはるかに難しい。 … その結果、主人公は、 (たとえ1945年の終戦を乗り越えて生き延びても) 結果的には現代(202X)の戦争で死ぬことになります。 日本は同じ過ちを繰り返すはずだから。 そのような絶望的な予言のドラマでした。 ◇ そもそも戦争は、 「どちらが先に仕掛けるか」という話ではない。 たとえば、 敵基地のミサイル発射準備に即応した攻撃は、 たとえ自国にとって「自衛」だとしても、 相手国にとっては「侵略」を意味するはずです。 アメリカがイラクに対し、 「大量破壊兵器がある」 との嘘の口実で攻撃したように、 「敵基地でミサイル発射の準備がされた」 との嘘の口実で先制攻撃を加えるのは可能。 むしろ、それこそが、 武器商人(軍産複合体)が戦争を開始させる常套手段。 彼らは武器を売り、戦争をさせることで稼ぐ。 けっして領土的野心などで戦争するのではなく、 戦争させることそれ自体を目的にしています。 アメリカが定期的に戦争できるのは、 そのようなルーティンを可能にする状況があるからです。 うまく口実を作れば、いつでも戦争を開始できる。 そのような戦争は一種の公共事業です。 日本に真珠湾を攻撃させたのも、 アメリカが「自衛」の口実を得るための挑発であり、 日本はまんまとそれに乗せられただけのこと。 戦争のできる状態を作れば、 すぐにでも戦争は始まってしまう。 したがって、重要なのは、 戦争が不可能な状態を維持することです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.10.02 13:22:04
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