カテゴリ:ゆべし(旧サイト+ブログ版)
2010.11月初公開 ![]() 写真のお餅を「ゆべし」と言われたら 秋田の人以外は皆「ウッソー」と、のけぞるでしょう!! ええ?なぜ?どうして?なにゆえ 巻物の餅菓子が「ゆべし」なのー???
その答えとなるかどうかは別として、 秋田では「ゆべしとは、えびすが訛ってゆべしとなった」という説が、 まことしやかにささやかれています。 現に角館にはえびす餅というゆべしもありますが・・・。 ああ、ややこしい! それに「えびす転訛説」は、山形でも聞きます。 でも、よくわからないというのが実情です。
それでは「なぜ巻物の餅菓子がゆべしなのか」という問題は、ひとまず棚上げして 模様を一つひとつ見ていきましょう。
束ね熨斗(たばねのし) 写真の「ゆべし」は、濾し餡を練りこんだ餅に白餅で模様を入れています。 この模様は、この地方で昔、本膳料理の口取りに使われました。 白地に食紅で赤くすると祝儀、黒は不祝儀なんだそうです。 なお束ね熨斗模様は、地方独自の模様ではありません。 元々は贈り物に添えられた熨斗あわびをデザイン化したもの。 延宝5(1677)年に出版された『小袖御ひいながた』に 小袖模様としても取り上げられています。
幾何学模様 この渦巻き模様は、秋田では「ゆべし」以外に 運平や山科にも、よく使われます。
さて、ここから先は 秋田県ならではのメンドーな事情をお話しすることにいたしましょう。
巻物型の「ゆべし」は県南部の家庭では概ね油焼きして作っていました。 その「みそ焼き」などの名前で呼ばれる餅菓子の もう一つの呼び名が、県南部ではなぜか「ゆべし」なのです。 また近年、直売所などで販売されている「三杯みそ」「花みそ」は 「みそ焼き」については、いずれ。 ほかにも県南部のお菓子屋さんで「三杯餅」の名で製造販売されている餅菓子を 「ゆべし」と呼ぶ人もいます。 「三杯餅」は餅粉、ウル米粉(しん粉)、濾し餡を練りあわせ、蒸して巻いたものです。 私の理解では「三杯みそ」を洗練させた餅菓子が「三杯餅」だと思っています。
ではもう一度、田沢湖町の「ゆべし」に話を戻す前に、 秋田県内で食文化的に仙北市田沢湖町が どのように位置づけされているかからお話しましょう。 秋田県南部とは雄勝郡、湯沢市、横手市、大仙市、仙北市を指します。 このうち大仙市北部は県央の影響を受けます。 そして仙北市一帯は県北部の影響を強く受けます。 いわば県南部と県北部との緩衝地帯のような土地柄が仙北市なのです。
であればこそ、田沢湖町の「ゆべし」は、 県南部と県北部に伝わる巻物のお餅の折衷型のような様相を呈しています。 たとえば今回ご紹介した写真の「田沢湖のゆべし」の材料は、 餅粉、ウル米粉(しん粉)、濾し餡。 それらを練った生地を蒸してから巻いて作られています。 模様が入るか入らないかの違いだけで 「三杯餅」と材料も製法も同じです。
県北部では餅粉にすりおろしたじゃがいもを入れ、蒸して生地を作ります。 名前は「かまぶく」。ご祝儀用蒲鉾の代替品だったという説があります。 「かまぶく」は秋田県の「あきた食の国ネット」さんの 「かまぶく」ページでご覧いただけます。 この「かまぶく」を「ゆべし」と呼ぶかどうかのディープな県北事情については、 当方情報がなく、まったくわかりません。 しかしながら県南部と県北部との緩衝地帯である田沢湖町の「ゆべし」には 濾し餡のかわりにゴマやきなこを練りこんだものもあります。 またウル米粉のかわりにすりおろした山芋もしくは長芋を餅粉に 練り合わせた生地のものもあります。 いずれのお餅も美しい模様が入ります。
このようにざっと秋田県内の巻物型のお餅を見てまいりますと、 巻物の餅菓子のルーツは、 祝儀・不祝儀用の口取りだったところにあると考えられます。 ただそれでもなお 「巻物型のお餅をなぜ、ゆべしと呼ぶのか」という問題が 素朴に大きく立ち上がってくるのです。 つけたすことがあるとすれば、 食べたときの素朴な印象は「ゆべしからは遠いなぁ」というものでした。 あくまでも私個人の感想ではありますけれども。。。。。
なお巻物型のお餅をゆべしと呼ぶ地方は、秋田県のほか 岩手県の一部と青森県津軽地方にあります。
* 直売所で売られている「三杯みそ」「花みそ」はアレンジが加えられていて、 より進化したお餅になっているようです。
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Last updated
Dec 6, 2018 11:36:54 AM
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