カテゴリ:日常
福岡市博物館にボストン美術館所蔵の浮世絵がくるという話は4月にダビンチ展を見に行ったときに知って、是非とも行かねばと思っていたのだが、物忘れがとみに激しい私はすっかりそのことを忘れていたのだった。
ところが、とある用事で市役所に行き、ポスターをみて思い出し、よくよく見たらなんと今週末までの会期とあるではないか。これは一大事。山のように積みあがってる雑事はそっちのけで取り急ぎ見に行くことにした。 今回の展示の目玉は鈴木春信の作品で、100点以上の絵が出ていた。大きさは大きい物でもせいぜいB5くらいで、わりと小さめのものが多い。たまに柱に貼ったらしい長ひょろいのものあるけれど、数は極めて少なかった。 ボストン美術館で春信を研究している人の映像とインタビューが放映されていたので、興味深く聞いてきた。 葛飾北斎などよりも少し前の時代の春信の浮世絵としては初めての多色摺りでその鮮やかな色から錦絵と呼ばれたそうだ。 最初は個人が趣味的に作成し、仲間内で配布していたものがだんだん市中に出回ったようで、同じ絵柄でも時期によって使われている紙の質が違ったり、若干模様が変えられたりしているんだそうだ。 こういうのもこの時期の浮世絵を大量に保管している美術館の研究だからこそ、わかったのだろう。 世界中でたった1枚しか現存が確認できていないものとか、そういう非常に珍しいものも出してもらっていたようで、ボストン美術館に行ってもなかなか見ることができないものもあったようだった。 春信の初期のものは、見立てものと呼ばれる、古典の一部を本歌取りしたような作品が多く、茄子の与一をもじって書かれた絵とか(ご丁寧にも背景に茄子畑が書かれていて見事な茄子がなっている)鷺娘とか、伊勢物語のカキツバタのあたりとかわかりやすいものを厳選して展示してあったのだとは思うけれど、なかなか面白い趣向でさすがは江戸時代だなと思った。 意外と好きな絵は絵葉書になっていなくて手にはいらないのだけれど、今回も例にもれず、一番欲しいものはなくて、二番手を手に入れてきた。 確か絵の名前は「夕立」だったと思うが、勝手に「洗濯物、あーれー」と命名(笑) 絵暦と言われるものの一部で、絵の中に数字などが入っていて、何月の絵なのかがわかるんだそうだ。この「洗濯物、あーれー」もそのひとつ。干してある洗濯物の着物の柄に数字が隠れているらしい。 着用している着物の柄行き、帯の模様などが私はとても好きなのだ。 この絵に限らず、本当に細かい模様が実に繊細に刷られていて、その上「空摺り」と呼ばれる技法を駆使して紙に凸凹をつけて模様を出していたり、小さい絵ではあるのだけどじっくりと眺めて楽しめる趣向が凝らされていた。 会場外の記念品売り場で、このはがきともう一枚、今回展示とは関係なくおそらく売れ行きがいいために用意されたと思われる歌川国芳の猫のハガキを購入。 ついでに猫シールも手にいれた。 この時代の浮世絵って考えて見たら現代のジャンプとか花とゆめとかといい勝負の印刷物で、だから花瓶の包み紙になって欧州に渡ったりしているわけだけど、これらの美術的価値に気が付いてせっせと集めてくれたアメリカの人たちのおかげで私たちもこうやって見ることができるんだなと思うと、なんだかとても複雑な気持ちになった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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