カテゴリ:歴史/考古学/毛人
中高瀬観音山遺跡は高地性集落として有名な場所である。このブログでも既に取り上げた。
中高瀬観音山遺跡 中高瀬観音山遺跡―石鏃分析 本遺跡は集落が狭い尾根上に継続して営まれていたために遺構の重複が激しい。このためいわゆる一括資料と言えるものがあまり見当たらない。編年作業の対象時期で例外的に一括性に優れる土器が取り上げられた住居2軒を見出したのでその土器を検討した。 分類結果 「中高瀬観音山」 土器分類(在来系は「おぢさん」シート、外来系は「成塚向山」シート参照) 鏑川上中流域弥生後期4期~古墳前期土器分類 《216号住居》 〔左〕216-1272 (F4) 〔右〕216-1274 (G2) 216号住居ではS字甕が3点と球胴形のくの字甕2点が出土ている。S字甕はどれも上に示したものと似ており、全て横ハケがなくハケが粗いF4(D類)のタイプ。くの字甕もハケ調整で、もう一点のくの字甕の頸部はやや直立する。一ノ宮押出ではF2とF3のS字甕が主体で9号住居のみF6段階のS字甕が検出されていたので、216号住居のS字甕はその間を埋める資料となる。F5が抜けているが、F5は時期的な差ではなく口縁部が伸長するタイプでF4(C類)と並行する。 〔左〕216-1271 (E2) 〔右〕216-1273 (C2) 壺はこの2点が出土している。1271(E2としたがE3と中間的)はミガキ調整で底部は欠けているが突出しそうだ。1273(C2としたがC3と中間的)は粗いハケ調整となっており、頸部付け根には突帯のようなものが廻っている。 〔左〕216-1265 (B1) 〔右〕216-1264 (B2) 鉢はB1タイプとB2タイプが2点づつ、それぞれ似たような感じのものが出土している。216号住居はG2タイプの甕やC2タイプの壺など、F4のS字甕と並行する土器群を知るのに良い材料となる。 《KJ04号住居》 〔左〕KJ04-1317 (E??b) 〔右〕KJ04-1319 (A4Pa) KJ04号住居は数は少ないものの住居の重複がなく興味深い資料が出ている。壺1319は折り返し口縁部と肩部に縄文が施されている。口縁はやや異なるが、上丹生屋敷山遺跡の環濠外段階でよく見られたA2Paなどとほぼ同時期かやや先行するものだろう。共伴の高坏1317は脚部の大半を欠いているが、上丹生屋敷山の高坏で例に挙げたYA132号住居4(E4Na)と残存部までは似た形をしている。ただし、こちらは赤彩品である。中高瀬に適用できるか分からないが、上丹生屋敷山では高坏の赤彩品は環濠外段階にはほぼ見られなくなる。高坏1317も上丹生屋敷山の環濠外段階よりやや早いと推測できる。 編年作業はまだ途中で暫定的であるが、今まで見てきた遺跡の時期的対応を推定した。上から下への順序で推移したという見通しを立てている。 上丹生屋敷山環濠内(1段階)、東八木阿曽岡権現堂(樽系) 中高瀬観音山KJ04、東八木阿曽岡権現堂(吉ヶ谷系) 上丹生屋敷山環濠外(2段階)、東八木阿曽岡権現堂(吉ヶ谷系) 上丹生屋敷山環濠外(3段階)、一ノ宮押出、東八木阿曽岡権現堂(吉ヶ谷系・北陸系) 上丹生屋敷山環濠外(4段階)、一ノ宮押出、東八木阿曽岡(東海系) 中高瀬観音山216 一ノ宮押出9 土器の図はすべて群馬県埋蔵文化財調査事業団 1995 『中高瀬観音山遺跡』に依る。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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