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テーマ:お勧めの本(7270)
カテゴリ:本
吉本ばななと言えば、『キッチン』で世の中をばななブームに巻き込んだけど、私には『キッチン』の本に入っている彼女の大学卒業制作作品『ムーンライト・シャドウ』の方がずうっと印象深い。
大切な恋人、等を交通事故で亡くしたさつき。その悲しみから立ち直れずに日々を送るさつきは、あまりに眠れないので夜明けのジョギングを始めた。彼との想い出の場所だった大きな川に架かった橋の上で、ジョギングの時不思議な女性うららと出会う。ある日うららは、「あさって朝の5時3分前までにこの間の場所に来ると、100年に1回くらいに色々な条件が重なってあの場所である種のかげろうが見えるかもしれない」と言う。 そしてその朝、さつきはあの橋の上で… 当時話題の『キッチン』読んで、もちろんそれなりに感動してそのキッチンの最後に載っていた『ムーンライト・シャドウ』を読んだのだが、私は『キッチン』という小説がどんな物語だったかを忘れるくらい、この小説にどうしようもなく惹かれてしまった。 ファンタジーと言われればそうかもしれないが,どうしても説明のつかないようなことが、こと死に関しては起こりがちな気がする。さつきが出合った現象は幻かもしれないし、さつきの心がそうさせたものかもしれない。 大切な人を亡くすというのは、その人を忘れるなんて言う事は出来なくても、人はその悲しみから時間をかけて少しずつ解き放たれて行く。ずうっと悲しみをそのままでひきずっている事なんてできない。もしそうだったら、前へは進めないしその人の人生は死んだも同じかもしれない。時が少しずつ癒してくれるもの。忘れる事はできない、忘れたくない。でも、この悲しみから前へ進まなくてはならない。 今話題の『世界の中心で、愛をさけぶ』は、私は原作を読んでもいないし映画も見ていないのではっきりとはわからないが、テレビドラマを見ている限りでは、主人公は17年間も亡くなった恋人の事を想い、ある面で立ち直れずにいる人のように見うける。 17年間…それはちょっと長すぎる。どうしてそんなに長くそうなったのかは、これからのドラマを見ないとわからないが。 『ムーンライト・シャドウ』を初めて読んだ時、私は最後のこの部分を読んで大泣きしてしまった。そして,今日久しぶりに読んでみて、やっぱり泣いてしまった。 等。 私はもうここにはいられない。刻々と足を進める。それはとめることのできない時間の流れだから、仕方ない。私は行きます。 ひとつのキャラバンが終わり、また次がはじまる。また会える人がいる。2度と会えない人もいる。いつの間にか去る人、すれちがうだけの人。私はあいさつを交わしながら、どんどん澄んでゆくような気がします。流れる川を見つめながら,生きねばなりません。 あの幼い私の面影だけが、いつもあなたのそばにいることを、切に祈る。 手を振ってくれて、ありがとう。何度も,何度も手を振ってくれたこと、ありがとう。 『ムーンライト・シャドウ』 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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