お盆がやって来た。35年前の8月15日、父のお骨の前で、私は能登に帰って染めをすると決心していた。
それから月日を重ねて・・・能登での染色生活が35年になった。長いことは自慢にもならないが、この仕事のほかに就くべき事が無かったのだと納得できる(^^
そうしてお盆に17年ほど前の素描きの追加がやってきた。縁あって18年前から能登上布に描くことになったが、初期の頃のテッセン花模様の帯。何種類か描いたものの一つだけど、写真資料が残してあるので同じように描いた。
染色を始めた京都の工房で46年前に習った付け立て運筆の描き方、先生の描く前に正座して教わっていた。
長い間のうちに自分流の空間を仕込むようになっていたが。まぁ、若いころ漠然と描いていたら、「上手く描こうとするな!濃淡だけに頼るな!」と上司に厳しく叱られた記憶が蘇ってくる(^^;
手のひらに乗るように花が開いている姿を描く。葉の奥に指が入るように空間を描く。手前の葉から遠くの葉までの距離を描く。生命感が伝わるように描く。花と葉の茎の性質を踏まえて描く・・・他にも細かいことはあるが、こうした幾つかを意識して描いていた。
今観ると構図にバランスの単調さがあったけど、今回は、あまり直さなかった。追加として、17年前の自分に従った(^^
17年前の描く姿勢は、今も変らない。自然であること、不自然にならないこと。人の手は不自然になりやすい。
自然の中に咲く花を描く自分も自然の中にある。見る人も着る人も自然の中に居る。自然のものを描く自然な取り組み方で、私の立つ位置は、そこにある。
17年前も今も、17年先も。私の自然観は、それで良いのだと思う。描く私が不自然を作り出さないようにすることだ。 | |