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私訳・源氏物語

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August 16, 2018
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カテゴリ:源氏物語つれづれ
この巻は最愛の紫の上を失った光源氏51歳の一年である。

紫の上が『つひに いかにおぼし騒がん
(私が実際死んだなら、どんなに嘆き悲しむことか)』と危惧した通り、
悲嘆のあまりすっかり涙もろくなり、何を見ても、何をしても心が満たされず、
呆けたような日常を送る可哀そうな光源氏が描かれる。
 
瀬戸内寂聴氏は「ぐずぐずして出家しない源氏はだらしない」とおっしゃるが、
私は可哀そうだなと思った。

また、出家すると男女のことができなくなるからとも書いていられるが、
それがほのめかされているのは中将の君だけで、
とくに執着しているようには読めなかった。

たまに女三宮を訪れると、読経していた彼女に冷たくあしらわれてしまう。

この時源氏は
「かくあまへ給へる女の御心ざしにだにをくれぬること、
とくちをしうおぼさる」。

この「かくあまへ給へる女(人に依存して生きているくせに)」
という表現はちょっと癪に触るけれども、「好いご身分」と思えなくもない。

女三宮に袖にされて、
今度は長らく無沙汰していた明石の上のお部屋にやってくる。

明石の上は出家を願う源氏に、出家よりも一門の安泰を見届けてほしいと
実利的で現実的なことを言い、
源氏に「大人びてきこえたる気色、いとめやすし(頼もしい)」と思わせる。

二人は夜が更けるまで語り合うのだが、
源氏はリアリストの明石の所に泊まることをしない。

誰に会ってもどこへ行っても
『私がこんな気持ちの時、上はこうは言わなかった』
と紫の上と比べてしまうので、喪失感を埋めることができないのだ。

母・桐壺の更衣に似ている藤壺の宮、宮の姪でこれまたよく似ている紫の上、
と形代ばかりを求めてきた源氏だったが、
紫の上というかけがえのない人を失って、
初めて人を愛することの本質を(読者もともに)実感することになる。

霜月には夕霧が、童殿上する息子たちを連れて挨拶にやってくる。
源氏にとっては孫たちなのだが、紫の上の血を引く者は一人もいない。

宮人は 豊の明といそぐけふ 日影もしらで 暮しつるかな

物思ふと 過ぐる月日も知らぬまに 年も我が世も けふや尽きぬる

これらのお歌にも、日常からの疎外感と虚無感が感じられて、
哀しい巻だと思った。





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最終更新日  August 19, 2018 05:33:25 PM
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