「瞬間睡眠」
丸の内線で、人身事故があったらしく、 運転再開のアナウンスが流れ、 人の群れが、起動し始めた。 人の頭数は、うじゃうじゃ溢れかえっているのに、 喧騒はなく、ホームは、被災地の避難基地のように、 まったりいた空気が、ゆっくりと、流れている。 「軌道落下」 どこで、どんな落ち方をしたのか、知らないが、 列車にのっている途中で、 中野坂上行きは、新宿行きに、 変更された。 最近は、終電になることも多いが、 夜も更けているのに、 今日の車内に、殺気は、漂っていない。 私鉄の最寄り駅に降りると、 ぴったり、零時だった。 同じ駅で、降りる人が、 わりと、多いが、 同じ顔を、見ることはない。 ようやくテリトリーに、 入れて、なんだか、ほっとするのだが、 歩道は、オレンジ色の街頭に照らされ、 乱雑に、繁茂する公園の、無精樹たちが、 朝に、2枚刃で、剃っても、夕方には、 ぶつぶつと、針金が、生え揃い、 人間「金ヤスリ」と化している私のアゴのヒゲたちと、 重なってしまうのだが、彼らの無精ひげは、 植物性だけあって、すーっとした、いい香りを放ち、 清涼空気飲料なのだが、 酸素以上に、二酸化炭素も、多かろうにと、 車道を、見ると、激流からの、ガスの伏流煙に、 囲まれていても、おかしくはなかろうにと、思われ、 だけど、煙草はおいしくて、 ふらふらと、ミニストップに入ると、 ポケットには、釣銭の銀貨が、 じゃらじゃと、重たく、消費しようと、考え、 オレンジジュース「なっちゃん」2リットルと、 100円アイス3個、「SOH」「MOW」など、 購入し、寒くない秋は、いいなあと、騒音に、紛れつつ、 聞こえてくる、鈴虫の音が、耳に、透き通り気味に、響き、 おとついは、眠れずに、 夜中に、台所で、ウィスキーを引っ張り出してきて、 飲んだのだが、その脇の冷蔵庫の谷間に、 電気釜が、鎮座しており、黄色い点滅ランプにつられて、 蓋を開けると、白米が充満しており、 やはり、「米はよい」と、感慨にふけり、 即、ふりかけをかけて、食べたのだが、 一向眠れず、しかし、朝は起きるのがつらく、 しかし、すでに、現在、40時間以上、 起動しているが、意識外の、ところで、 瞬間睡眠に、ふけっているようで、 夜は、更けても、眠くもなく、 「軌道落下」 してしまうと、バラバラなのかなぁと、思い、 だけど、食い物の中にも、肉は、いろいろ、入ってるしなぁとも、 考え、平和に、浸りつつ、煙草の吸いすぎか、 多少、気道が、傷みつつある気も、弱冠しないでもない、 9月と、10月の、変わり目の、夜なのだった。