「四日市男」
家に戻ろうとして、 新宿南口で降り、 巨大モニターのCMやPVを眺めながら、 一服していると、 見慣れぬ、携帯から、着信が入る。 一度、番号やメアドを、全て失ってしまい、 誰から、かかってきたのか、 わからないののは、 正直、こわい。 声をきき、瞬時に、相手を、 判別しなければ、わるいかなぁと、 思っているからだ。 「おれだよ、おれ」 誰だっけ、聞きなれぬ、男の声がする。 「今、東京に、出てきてさぁ、 小滝橋にいるんだけど」 間違い電話じゃないのか、 それとも、何かの営業か。 いろいろ、話すうちに、 ようやく、大学時代のダチ「井戸川」であることが、 判明した。 三重県四日市から、出張できているらしい。 馬場から、移転した、行き着けの飲み屋が、 小滝橋にあるらしく、今、そこに、向かってるという。 「井戸川」には、前もって、連絡するという趣味が存在せず、 到着と、同時に、現地から、電話するという、奇襲が趣味らしい。 タクシーで、駆けつけると、 すでに、飲み、食らっていた。 以前「彼女」が死亡し、未だに、ひずっている、 「純愛」かつ、ちょっと「暗い」男なのだが、 今日は、快活だった。 ただ、仕事による過労で、 書類を隣町店に、届ける際、 運転中に、居眠りしてしまい、 ガードレールで、自爆し、 丑三つ時に、車を「大破」してきたばかりだそうだ。 たまたま、シートベルトをしていて、 キズひとつなかったようだが、 悪運が強いのはよいことだ。 本人は、事故ったばかりには、 見えない快活さだ。 自分の車が、お釈迦になった以外は、 人も巻き込まず、ガードレールの修理費は、 会社が、出してくれるらしい。 業務上なんだから、中古の車、買ってもらえば、 なんて、せこく、法的には、 どうなんだか、わからないことを、話しつつ、 そーいえば、本日は、私も、 右腕を、車のサイドミラーが、掠め、 なんともなかったが、 向こうは、サイドミラーが、 折れたようで、または、畳まれたようで、 一瞬、止まって、そのまま、いってしまったが、 怒鳴られたら、どうしようなどと、どきどきしていた小心者なのに、 もしかして、有利なのは、こっちだったのではないか、などと、 煩悶しつつ歩いてたら、柱にも、ぶつかったので、 自分にとっても、不注意、この上ない季節のようだ。 あつくて、空気も、もあっとしてるし、 気をつけねばと。きょきょ。