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2006年05月24日
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カテゴリ:言語あれこれ

祖国とは国語

先週、空いた時間を利用してようやく読むことができました。
国際派の数学者が説く「国語教育絶対論」。

この本で一番印象に残ったのは、

美感や調和感なくしては、いくら論理的思考力が抜群であっても、どちらの方向に論理を進めてよいのかわからない。…中略… 美的感受性の重要性は、私の接した自然科学者のほとんどが、その分野でも同様に大切と言ったから、自然科学全般にあてはまるのだろう。

の部分です。

個人的にはかなり旬な話題なだけに、感動も一入です。
文章が汚くていいわけがない。
それは、自然科学の一領域である医学ももちろん例外ではない。
この部分を読んで、自分の目指している方向は間違っていないと確信がもてました。

「国語教育絶対論」に書かれていることはどれも大切なことなのですが、
もう一箇所、大きく頷いたのは、

国語が思考そのものと深く関わっていることである。言語は思考した結果を表現する道具にとどまらない。言語を用いて思考するという面がある。・・・中略・・・人間はその語彙を大きく超えて考えたり感じたりすることはない、といって過言ではない。

の部分です。

持ち合わせている語彙が多いほど、細かい思考ができ、
少ないほど、思考も大雑把になるというわけです。
「細かい言葉の使い分けなんて不要」と思っていらっしゃる方などはまさに、
後者の道をまっしぐら、といったところでしょうし、
著者に言わせれば、「情緒のひだ」までなくなってしまうことになります。

ところで、この本の帯の裏のところには、
著者を「華麗なる文章家」と評する表現があるのですが、
本書の前半部分である「国語教育絶対論」を読んでいる限りは、
「そうかなぁ」という感じだったのですが、
後半部分の「いじわるにも程がある」(著者の家庭の風景をつづったエッセイ)に入ると、
その印象は一変。
活き活きとした文章で、
著者と家族の情景がありありと浮かんできました。

前半の「国語教育絶対論」の部分はひょっとしたら、
著者の気持ちの強さと文章がもつ力とのバランスが、
微妙にずれているのかもしれません。
それだけ著者の国語教育に対する思いが強いのだと
私には感じられました。

日本語を大切に思う方ならきっと、
泣けるし、笑えるし、怒れる一冊です。




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最終更新日  2006年05月25日 02時07分24秒
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