「パパぁ、ちゃんと虹の話を聞いてる? だからぁ、入学式の時にね、お姉さんお兄さんからのプレゼントが、朝顔の種なんだってば。で、それをまくと、芽が出るでしょ。双葉になってツルが伸びて、蕾がたくさんついて花が咲くでしょ。だからみんな色が違うの」
「あっ君が小学生の時は、みんな同じ青だったよ、なのに、どうして虹のクラスのはみんな違うの」
「違うったって、朝顔だもん、そんなには違わないよ。ピンクとか水色とか、青や紫が濃かったり薄かったり。鉢の中は同じ色だよ」
「でも、鉢によって違うんでしょ、どうして?」
「だから、みんな2年生のお姉さんお兄さんからのプレゼントだから」
「ってことは、2年生が1年生の時にも色が違った、ってことでしょ」
「そうだね」
「だからどうして?」
「今の3年生が1年生の時に育てたのの種だからでしょ」
「だから、どうして違うの。普通、クラスのみんなのが同じ色が咲くんじゃないのかなぁ」
「パパ嫌い。もういいっ」
虹ちゃんの声がはっきり聞こえた時、僕の隠れた滑り台の下から、虹ちゃんとあっ君が見えた。
虹ちゃんがプイっと横を向いた時に、僕がじっと見ていたし、虹ちゃんの目が少し大きくなったから、虹ちゃんは僕に気づいて驚いてくれた、と思ったのに、それより先に
「虹ちゃ~ん」とひろ君が手を大きく振って呼んだ。
「うわぁ、ひろ君、久しぶり!」
虹ちゃんがにっこりして両手を振る。
「パパ、先に帰っていいよ」
「けど」
「だいじょうぶだってば。ここ毎日学校から帰ってくる時に通る道だもん」
「うん、じゃぁ、気を付けてね。お昼ご飯前には帰って来るんだよ」
あっ君は、「メンデルは朝顔じゃなかったから」なんてぶつぶつ言いながら帰って行った。
あっ君の声が聞こえたのかどうか、虹ちゃんは、僕の方に早足で来た、と思ったのに、やっぱり僕じゃなくて、ひろ君の方を見ていた。僕の方は見てくれない。歩き方がゆっくりになった虹ちゃんが言った。
「ひろ君、どうして滑り台の下ってか、こっちの公園にいるの?」
「サッカークラブの帰りに幼稚園まで来たんだけど、誰もいないから公園まで来たんだ。それにここしか空いている日陰なかったし。幼稚園の時から入っているサッカーのクラブ、あれ、虹ちゃんの南小でやっているんだよ。知らなかった?」
「ああ、そうだっけ。で、野球のクラブはひろ君の東小だよね。そういえば、さあやちゃんがそんなこと言ってた」
「さあやちゃんって、もしかしてゆうた君が言ってた南小の女子で野球がすっごい上手な子?」
「そうそう、知ってるんだ? 幼稚園違ったのに?」
「ゆうた君の家の近所なんだって」
「ねぇねぇ、あみちゃんとあゆちゃん、元気? ずっと会ってないんだ」
虹ちゃんはそう言いながら、僕の方は見ないで、ひろ君と僕の間に入ってきた。虹ちゃんの後ろに隠れてほっとした僕は、今の内に逃げなきゃ、とゆっくり動き始めた。
その5まで続きます
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