ワート『温暖化の〈発見〉とは何か』 2005年3月、みすず書房
『温暖化の〈発見〉とは何か』※ 2005年3月、みすず書房 みすず書房の該当書リンク 本書は、地球温暖化の科学史をたどった本です。著者は科学史と物理学が専門です。2003年に刊行された書物の翻訳です。ですから、昨今のように「温暖化」についてメディアが騒ぐようになる前に出版されたと言えます。 ちょうど、日本では一旦、温暖化ニュースが落ち着いていたところ、2021年に真鍋淑郞博士がノーベル物理学賞を異例の気候学・気象学分野で受賞したことで再度、ニュース化されたわけです。まあ、でも一般の人々は温暖化そのものは直接、気にしていませんよ。 原題:THE DISCOVERY OF GLOBAL WARMING著者:スペンサー・R・ワート訳者:増田耕一訳者:熊井ひろ美頁数:296頁定価:3,520円 (本体:3,200円)ISBN:978-4-622-07134-1発行日 2005年3月15日●本の裏表紙には下記のような文面が印字されている。↓【裏表紙の印字文面】 地球温暖化問題はわかりにくい。どれくらい「危機」なのか? それが白か黒かで割り切れない問題なら、私たちは何を根拠にすみやかな対策を迫られているのか? 本書は地球温暖化の科学史をたどりなおす試みである。人間活動による“正味の”温暖化が科学的に認められ、その影響が危惧すべきものと認められるまでには、いくつもの歴史的な研究成果が蓄積されなければならなかった。 地質学/地球物理学上の新知見、シミュレーションによる気候モデルの進歩、急速な気候シフトが起こりうる動的な地球システムという新パラダイムなどだ。それらが量的に信頼できるほど精密になることも必要だった。少数の決定的なデータから「定説」ができるほど話は単純ではない。 温暖化研究の基石となった科学的事件の多くが、研究者たちの苦心や興奮とともに、この一冊の中で明快に紹介されている。彼らの体験した温暖化〈発見〉の過程を追体験することで、私たちも温暖化とはいかなるものかを、ようやく〈発見〉できる。 温暖化を「一時的な問題」「データを政治的・恣意的に使った科学的虚構」とする異論は今日も消えない。それは研究分野が科学的に健全に営まれていれば当然のことだろう。だがそのような専門的な論争の言わば“断片”が、各種メディアを通じてひとり歩きし、地球環境に関する誤解と混乱を煽るのはやっかいだ。本書はそれに振り回されない公平かつ明晰な事実認識を得るための、最初の拠りどころとして格好の一冊である。 ● 本書の重要と思われる事項 ・巻末に「(画期的出来事の)年表」が載っている。1800年から1870年を初期区分として、1988年を最終年としているが、「1988年よりあとの出来事は歴史的に重大と認定するにはまだ早すぎる」と明記されている(苦笑)。 ・温暖化の書名だが、もちろん地球寒冷化の件も前段事象として記述されている。 ・気候変化は、人間社会の時間概念より緩慢で長い。 現在は「間氷期」の一時期で、ここ百年ほど温暖化が目立つだけです。 私のブログでも以前に書きましたが、地球温暖化は政治的側面があるが、科学的には「地球寒冷化」と裏表の事象です。個人的には、現在は最後の氷河期が終わった「間氷期」の一時期で、数百年単位で寒冷化に向かうと考えています。 人間社会の時間概念より地球科学のそれは長いので一般市民の意識に上がりにくい。 地球温暖化の科学的な解決策が提示されないのに「低炭素社会を目指す」とか笑うしかないです。 <参考:私のブログにある関連記事> 2009年12月01日_地球温暖化議論は科学検証が不十分な状態 2009年12月02日_地球温暖化問題と国立環境研究所の不幸なタッグ・本書で一番よく引用される日系科学者は、真鍋 淑郞博士です、 真鍋 淑郞(まなべ しゅくろう) 気候モデルの研究者であり、地球科学分野でコンピュータで、シミュレーションを行うための数値モデルの開発(en:Numerical modeling (geology))の先駆者の一人。1969年には気候モデルにおいて世界で初めて大気循環と海洋循環を組み合わせた「大気海洋結合モデル」を発表した。これを含めて、一連の発表したモデルは2021年現在に至るまで気候変動予測のベースとなっている。 2021年のノーベル物理学賞を90歳で受賞 ※〔目次〕序文第1章 気候はいかにして変わりうるのか?第2章 可能性を発見第3章 微妙なシステム第4章 目に見える脅威第5章 大衆への警告第6章 気まぐれな獣第7章 政治の世界に入り込む第8章 発見の立証 本文を振り返って 年表(過去の画期的出来事)解説原註参考文献索引序文