少し以前の本:「神」に迫るサイエンス―BRAIN VALLEY研究序説
本棚を整理していたら、奥から昔の文庫本が出てきた。『「神」に迫るサイエンス―BRAIN VALLEY研究序説』、角川文庫、2000年(平成12年)12月監修:瀬名 秀明,著者:瀬名 秀明,澤口 俊之,山元 大輔,佐倉 統, 金沢 創, 山田 整、志水 一夫 この本はハードカバー版(平成10年)の文庫版で少し加筆されている。現在は絶版。<出版社による紹介>脳はいかに「わたし」を創り出すのか?チンパンジーは「神」を知っているか?コンピュータは「魂」を宿すことができるか?臨死体験で死後の世界を証明できるか?ベストセラー小説『BRAIN VALLEY』※に記された「科学」の各ジャンルを、第一線の研究者たちが最新の知見とともに解説。読者の知的好奇心を刺激しながら、現代の科学を見渡す恰好のガイドブック。※ここで、BRAIN VALLEY(ブレイン・ヴァレー)とは、瀬名秀明が1997年に発表したSF小説のこと。第19回日本SF大賞を受賞した。瀬名秀明 BRAIN VALLEY (Wiki)著者代表の瀬名秀明は薬学出身で生命科学に興味を持ち、大学院生時代に書いたホラーSFである『パラサイト・イヴ』でデビューし注目された。現在はSF作家かつサイエンス・ライターということになっている。<内容構成> ・瀬名 秀明:脳科学からの『BRAIN VALLEY』ガイド―脳進化、脳内分子、感情、そして臨死体験を中心にして・山元 大輔:心の遺伝子―物質と観念の相克に分子生物学はどう答えるか・佐倉 統:人工生命―カントの思想という生命体 あるいは、文学によって科学をすることは可能か?・金沢 創:霊長類学―チンパンジーはことばをしゃべるか?そして死の観念をもつか?・山田 整:脳型コンピュータ―本当の意味で賢いコンピュータを目指して・志水 一夫:UFO再入門・序章―間違いだらけのUFO論議・瀬名 秀明:臨死体験―新たな脳科学を切り拓く興味深い項目名もあるが、怪しいものもある(笑)。作家の立花隆と類似テーマとも言えるが、立花と異なり研究活動もできる人が著者になっている面が異なる。最近のAIへの社会的見直しに伴い、以前の未解決の各種テーマが改めて取り上げられる情勢になっているから、この本は時代の先行的作品とも言える。最近のAIは主にビジネス面から注目されている。かつて80年代後半から90年代前半にも初期のエキスパートシステムを初めてとして「人工知能」という名前で大変に話題になったが、その後、理論上の進展が止まってしまった感じ。現時点のAIでは、「問題解決方法(アルゴリズム)が見えており、大量のデータを高速に検索できる場合」にはゲームのチェスに見られるように人間より早く答えを出せる。一方、「元々の解法が見出されていなかったり、曖昧だったり複数解が並列な場合」は昔と変わらずの状態が現状と言える。生命の構造や人間の脳構造は工学屋が思うよりずっと複雑で(だから研究余地が大きい)、工場用ロボットのようにシンプルな部品を工学的に実現しても、単純なことしかできず、人工知能にならないからである。人気ブログランキングへ