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2009.06.13
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カテゴリ:読書
村上春樹 (新潮社)

できるだけネタバレを避けます。(なので、わかりにくい)

特に村上春樹ファンというわけでもないので、7年ぶりの長編新作と聞いても、当初は「書評が出てから読もうかな」というぐらいの気持ち(そもそも最近はハードカバーの本を買うこと自体が少ない)だったが、数日で売り切れる店が出たりすると読みたくなってしまうもの。

それに2月のエルサレム賞受賞スピーチが、この人の印象をずいぶん変えたこともある。村上春樹に政治性なんてこれっぽちも期待していないけど、作品の根底にある思想は大切だと思う。

「高くて固い壁があり、それにぶつかって壊れる卵があるとしたら、私は常に卵の側に立つ」という作者のメッセージが共感を呼び、この作品の売れ行きに影響したのは間違いないだろう。(少なくとも私の買った2冊はそうである)

閑話休題

2巻で1050ページあまりの大作だが、あの傑作「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」のように短い章ごとに二人の主人公が入れ替わる構成になっていて、適度に緊張感が持続する。

著者にしては珍しい三人称だが、各章の視点は一人なので、今までの作品と大きく変わったという印象はない。文体もいつも通りで、ゆっくりと小説の世界を楽しめる。

いくつかの命題は、何の解答も示されずに終わっている。
謎めいた存在は謎のままである。現実はオーウェルの「1984年」のようにわかりやすいものではない、ということか。「説明しなくてはわからないことは、説明してもわからない」

この作品に何を感じるか、というのは人それぞれだろうし、読者の勝手な解釈を誘うところが村上作品の魅力のひとつでもあると思う。

主人公が「正しい歴史を奪うことは、人格の一部を奪うのと同じことなんだ」という場面がある。歴史あるいは時間というのは非情だ。取り返すことは絶対にできない。しかし、大切なものを取り返すための努力は崇高だ。
そんな感想を持った。



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余談
 映画「ゲッタウェイ」の話が出た後の会話の流れでフェイ・ダナウェイの名前が出てくる。アリ・マッグロウの間違いか、それとも主人公がフェイ・ダナウェイに似ているということなのか。






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最終更新日  2009.06.14 08:29:09
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