「極南の迷宮」阿武天風
例によって少年小説大系の一環だが、SFというよりこれはヒロイックファンタジーであり、こちらの方に分類した。武力をもたない平和主義者では駄目だ、という主張は九条至上主義者にはお叱りを受けるかもしれないが、弱肉強食の戦前の時代を考えればリアリティがある。何しろ大正二年の作である。二年後は第一次世界大戦勃発だ。悪魔の国へ乗り込んでの悪魔退治というのは、桃太郎に着想を得たものだろうか。わからないが、お供の犬猿雉は本作に登場しない。代わりにあの白雪姫が、主人公のパートナーとして活躍する。内容的には通俗だが、文体に読ませるものがあって、今日読んでもなかなか面白い。まあ梗概のようなところもあり、一度読めばたくさんではあるが。【中古】 少年小説大系(第18巻) 少年SF傑作集 /月路行客(著者),會津信吾(編者),横田順彌(編者),尾崎秀樹 【中古】afb