「緑人の魔都」南沢十七
昭和二十三年の本。「南海の太陽児」と同じく秘境冒険小説であるにもかかわらず、作者が違うとはいえ、何たる様変わりだろう。誘拐された博士の足取りをたどって、主人公の少年たち一行が行きついた先は、南海の秘境だった。そこを支配していたのは蜘蛛とクモザルを合わせたような霊長類で、どうも世界を支配すべく、「頭脳」をさらってきたものらしい。よくよく読んでいくと、透明な巨人の皇帝がいて、幽閉されていた。皇帝は海神(ポセイドンのことかな)の息子で、ひそかに父親と連絡を取ろうとしたのだが、かなわず、そこへ海神からの遣いというふれこみでやってきたのが少年たち御一行だったから、皇帝を幽閉した方はヤバいとばかり立ち回り、逆に皇帝はおお、と期待していたりするのだが、なにぶん本物ではないものだからどことなくコミカルである。とはいっても、物語の構成と完成度において「南海の太陽児」には及ぶべくもなく、バロウズやハガードの秘境ものの雰囲気だけが売りの、大人になって初めて読むには少々辛いお話であった。【中古】 少年小説大系(第18巻) 少年SF傑作集 /月路行客(著者),會津信吾(編者),横田順彌(編者),尾崎秀樹 【中古】afb