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三角猫の巣窟

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2014.11.14
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カテゴリ:小説
ビッチの葉子が婚約者の木村に金をたかりつつ倉地と熱愛して病死する話。

前編あらすじ:日清戦争が終わる頃、わがままで才気ある19才の美女の早月葉子が天才従軍記者の木部と熱愛して結婚したものの、すぐに幻滅して別れて木部に内緒で私生児定子を産む。6年後に25歳になった葉子は生まれた時代を間違えたと思ってアメリカの企業家の木村の許婚になることで妥協して、木村の友人の古藤義一と一緒に船の切符を買いに汽車に乗って木部と再開するものの無視する。船内では高慢な田川夫人に煩わされたり、岡義夫に惚れられたり、事務長の倉地三吉に手篭めにされたりしながらアメリカに着いて木村と会うものの、木村の事業がうまくいってなくて葉子は木村から倉地に乗り換えようと仮病を使って日本に戻ることにする。

後編あらすじ:日本に戻った葉子が倉地と旅館に泊まっていると、田川夫人の差し金で新聞に自分と倉地の事が書かれていて、巷の噂になっていた。葉子は隠れ家に移って倉地に妻子を捨てさせた後に妹の愛子と貞世をひきとり、木村が事業に成功したので金欠の倉地のために金づるとして利用することにして、岡が遊びに来たりして楽しくすごすものの、やがて病気になったり、古藤に木村への裏切りを咎められたり、倉地の子分の正井に金をたかられたり、倉地に飽きられたりして葉子はヒステリーを起こして凶暴になって貞世につらく当たっているうちに、貞世が腸チフスになって葉子は看病でやつれて、自分の病気の手術をするものの術後がよくなくて、木部に定子を会わせるように頼んで苦しんで死ぬ。

三人称。日清戦争が1894年(明治27年)で、それから6年後の1900年頃が物語の舞台。時系列順に葉子の半生を書くというオーソドックスな展開で、前編は葉子の目だった行動に対する周囲の反発が書かれることで時代にそぐわない才気を持った女という側面が出ていて、親戚との不和や田川夫人との駆け引きに緊張感があってよかったものの、後編は葉子が勝手にヒステリーを起こして騒ぐだけでプロットとしてはあまり面白くなくなって心理描写が中心になる。
プロットに物足りない点があって、後編で病気で死ぬ流れになるのなら前編でわざわざ仮病を使う必要はなかったんじゃなかろうかと思う。仮病を使うことで計算高い悪女ということを強調したかったのか、あるいは仮病だったのに病気になってしまう天罰的なエンディングにしたかったのかというのが狙いかもしれないものの、一年たらずで生死をかけた大手術が必要なほど病気が悪化するもんだろうかというのは疑問に残る。それに葉子は時代に合わないからといってアメリカに行くはずが日本に戻って恋に没頭してるし、結局葉子は何がしたかったのか、行動の動機がいまいちよくわからない。倉地や貞世を殺したがったりする心理もよくわからない。キチガイだから行動に一貫性がないのだと言えばそれまでの話だけれども、読者が主人公を理解できないのはつまらないのだ。
文体は文章にカタカナの英語とアルファベットの英語が混在しているのは当時訳語がなかったのだろうか。読みにくいし、描写に不必要な作者の気取りがあからさまに出るのは読者の物語への没入を妨げてしまってよくない。
登場人物にはそれぞれモデルがいるらしく(詳細はwikipediaの『或る女』参照)、モデルのエピソードに引きずられすぎたのか、木部との再会とか、正井に脅される件だとか、愛子と岡の恋愛とかのエピソードとして発展しそうなところがたいして展開せずにちょろっと書かれただけでその後のプロットに影響するでもなく、脇役の活躍がないまま葉子のひとりよがりでキチガイが自滅したような尻すぼみの終わり方になってしまって、プロットとしては物足りないものの、女の半生を書いた定番の長編小説としてはそれなりに楽しめる。
ちなみに作中で倉地にバカ呼ばわりされる田川夫妻のモデルは鳩山和夫・春子夫妻で、鳩山由紀夫は曾孫にあたる。小説とは関係のない話だけれど、鳩山由紀夫の祖先をモデルにした登場人物までルーピー扱いされていたというのが面白い。

★★★★☆

青空文庫『或る女(前編)』
青空文庫『ある女(後編)』

青空文庫を読む場合はえあ草紙シリーズが縦書きで読めて、クリックでページをめくれて、しおり機能があって超便利なのでおすすめです。自分はふだんパソコンでAIR草紙無料版を使って読んでいます。





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最終更新日  2014.11.14 17:39:05
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