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三角猫の巣窟

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2018.02.19
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冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』は少年ジャンプに連載したり休載したりを繰り返している人気漫画である。ふつうは原稿落としたり長期間休載したりするような漫画家は週間連載に向いてないということで月刊誌に移ったり打ち切りになったりするのだけれど、ハンターハンターは大人気なのでいまだに連載を続けている。1998年の連載開始から20年経っているので、ずっと読んでいる読者は少年というよりほとんど大人だろうけれど、なぜそれほど長年人気なのか、大人にとって面白いのか。ハンターハンターの面白さを分析すれば売れるコンテンツの秘訣がわかるかもしれないので、いまさらだけれどハンターハンターの面白さを考えてみることにする。

●ストーリーの特徴

ハンターハンターは念能力を使いながら戦うバトル系の漫画で、努力して強くなって仲間との絆を深めて敵に勝利するといういかにもジャンプらしい王道の漫画である。ストーリーの展開をおおざっぱにいうと以下のようになる。

・ハンター試験編:父親がハンターだと知った主人公ゴンがハンター試験をうけにいって強敵のヒソカに殺されずに済み、キルア、クラピカ、レオリオと仲間になる。

・ククルーマウンテン:ゴンは暗殺一家ゾルディック家に軟禁されたキルアに会いに行く。

・天空闘技場編:ゴンとキルアが念能力(裏ハンター試験)を修行して闘技場でヒソカと対決する。

・くじら島への里帰り:ゴンが故郷に戻って父親が残した手がかりからグリードアイランドというゲームソフトを知る。

・ヨークシン編:グリードアイランドがオークションに出されて、ゴンはマフィアで働くクラピカと幻影旅団の戦いに巻き込まれる。

・グリードアイランド編:ゴンとキルアはゲームの中でビスケに修行してもらって強くなり、ゲームをクリアした特典を使って父親のところに飛んでいこうとしたらカイトのところに飛ばされる。

・キメラ=アント編:ゴンとキルアがカイトの仕事を手伝っていたら人間を食べる危険な蟻が繁殖したので退治する。

・会長選挙・アルカ編:キメラ=アント退治で会長が死んだので会長選挙が行われて、瀕死のゴンを助けるためにキルアはアルカの治癒能力を使おうとして兄のイルミから逃げて、治ったゴンはジンと会う。

・暗黒大陸編:会長の息子のビヨンドが暗黒大陸に行くと言い出して、暗黒大陸に向かう船の中でカキン王の王位継承戦が行われて、クラピカは王子を護衛しつつ第四王子を倒そうとする。

ストーリーはバトル系漫画なので戦いがメインで、二種類の戦闘パターンがある。
まずは目的主導のデスゲームみたいなパターンがある。ハンターになるためのハンター試験、ゲームをクリアして報酬をもらうためのグリードアイランド、暗黒大陸に向かう船でのカキン国の王子を選別するための儀式とか、限定された場所で特定の目的のために大勢の敵味方が入り乱れたバトルをしている。
それから動機主導の登場人物間の因縁を解消する対決をするパターンがある。ゴンが天空闘技場でヒソカに借りを返したり、クラピカが幻影旅団と対決したり、キルアがイルミに反抗したり、ヒソカがクロロと対決したりしている。

●登場人物の特徴

ハンターハンターには『幽☆遊☆白書』と特徴が似ている登場人物が多いと思うので書き出してみる。

ゴン:熱血バカ(浦飯幽助)
キルア:強い暴力チビ(飛影)
クラピカ:知的で中性的なイケメン(鞍馬)
レオリオ:弱いブサイク熱血バカ(桑原)
ヒソカ:変態ピエロ(美しい魔闘家鈴木)
ビスケ:若返りババア師匠(幻海)
アルカ:暴力チビのやさしい家族が監禁されている(雪菜)
クロロ:技を奪う能力(乱童)、オールバックの強敵(仙水忍)
ウボォーギン:やられ役筋肉(戸愚呂弟)
ハンゾー:ボディーガード担当ハゲ忍者(風丸)
ゲンスルー:爆弾能力(鴉)
バショウ:言葉の特殊能力(海藤優)
センリツ:盗聴能力(室田繁)

キルアのヨーヨー攻撃は六遊怪チームの鈴駒がやっているし、ゼノの龍頭戯画は飛影の黒龍波だし、強さの差はあるけれど特殊能力を使いまわしている感じで既視感がある。登場人物の特殊能力自体はバトル系漫画によくあるもので、特に面白いというほどでもない。『幽☆遊☆白書』でもハンターハンターでも忍者がハゲなのは作者は何かこだわりがあるんだろうか。

●知的要素としての面白さ

ハンターハンターの登場人物の設定自体は『幽☆遊☆白書』と似ていて目新しいものではないのに、なぜハンターハンターは20年間も飽きられずに人気があるのかというと、窮地に陥った状況をどう知恵を出して切り抜けるのかという戦略性が面白さの特徴になっている。デスゲーム型の戦闘パターンに戦略性を加えることで、脇役の人数の多さを面白さにつなげることができるようになる。
バトル系漫画は強敵と戦ううちに強さがインフレして収拾がつかなくなるパターンが多い。ドラゴンボールはその代表で、界王拳を数倍にしたり大猿やスーパーサイヤ人に変化したりしているけれど、結局やってることは殴り合いである。『幽☆遊☆白書』もトーナメントで戦ううちに強さがインフレしていくというテンプレ展開になってしまった。しかしハンターハンターは念能力の相性があることで、単なる強さ比べの殴り合いにならずに済んでいる。さらには念能力の発動に制約をつけることで、チート能力でパワーバランスが大幅に崩れないように制限している。たとえばクロロの技を奪う能力は物語に何度も登場してくる敵のボスにちょうどいい能力で、『幽☆遊☆白書』ですぐに倒された乱童とは違ってクロロは戦う度に違う技を使っていて、能力の底がわからなくて対策しにくい敵として攻略の難しさを強さにつなげていて、単純なパワーアップではない。
戦略性の面白さの例では、たとえばハンター試験に出てくるトンバはほとんど戦闘能力がない脇役だけれど、主人公に協力するふりをして裏切っていて心理的な駆け引きで物語の見せ場を作っている。グリードアイランド編では個人の念能力だけでなくカードの活用が加わることで、単なる力比べにならずにカード集めの知恵比べの勝負になっている。『幽☆遊☆白書』ではトーナメントで一対一の力比べにしてしまったせいで能力の組み合わせや状況の利用などの戦略としての面白さが乏しかったけれど、ハンターハンターでは『幽☆遊☆白書』と似たようなキャラクターでも状況を変えることで違う面白さを引き出せている。

●トリックスターとしてのヒソカ

物語展開のキーパーソンになるのがヒソカである。敵でも仲間でもなく、クロロとタイマンで戦いたいという動機のために協力したり嘘をついたり裏切ったりする。これは『幽☆遊☆白書』ではなかったキャラクターの行動パターンで、ヒソカの存在が物語展開の幅を広げている。
ヨークシン編ではクラピカと幻影旅団の対決がメインだけれど、そこではヒソカがクラピカと幻影旅団を橋渡しする重要な役割を果たしていて、ヒソカが幻影旅団のメンバーになったふりをして裏切ってクラピカに情報を渡して、占いによる未来予知を念能力でごまかすことで、単なるクラピカと幻影旅団の対決にならずにプロットが複雑になって先の展開を予想しにくくなる。先の展開がわからないから読者は結末が気になって物語に引き込まれる。占いや予言というのはプロットを作るための定番の仕掛けだけれど、予言を念能力でごまかすというのはハンターハンターならではの設定を活かした面白い展開といえる。
グリードアイランド編ではヒソカは除念士を探す目的を隠しつつゴンに協力していて、ゴンの父親探しのエピソードが展開している裏で幻影旅団のエピソードを進展させるのに役立っているし、レイザーとのドッヂボール対決では実力差がある戦いが一方的にならないように仲介して調整している。
ヒソカと仲良しのイルミも顔を変えられるので神出鬼没になる。味方や敵だと思っていた人物が実はイルミだったというパターンで物語を読者の予想外の方向に展開することができるようになっていて、プロット上の役割としてはヒソカを補助する役を担っている。変装で相手をだますのはルパン三世とか名探偵コナンとかの泥棒系でよく使われるプロットのパターンだけれど、騙し合いの戦略の面白さがうまれる。

●プロットのパターン

ハンターハンターのテーマを大雑把に言うと、家族と仲間の話である。ゴンは父親探し、キルアはゾルディック家からの自立、クラピカはクルタ族のあだ討ち、幻影旅団は盗賊仲間で、そのグループ間で利害関係をめぐってごたごたする話が展開する。普通の少年漫画なら主人公グループが正義、敵グループを悪として単純な二項対立でとらえて、主人公が苦労して敵を倒して大団円で終わるという展開になるけれど、普通の展開にならないのがハンターハンターである。

クラピカと幻影旅団は敵対していて、幻影旅団は欲しいものを奪うために平気で殺人する極悪非道な敵として描かれていて、どうやっても敵対関係が平和的に解決しそうにない状況である。しかしゴンは幻影旅団に仲間思いの側面を見出して、クラピカにもこれ以上殺人をしてほしくないということで団長との人質交換に応じて、パクノダは命と引き換えにゴンの思いを幻影旅団の仲間に伝える。こうすることで敵が単なる悪人にならず、敵にも仲間思いの人間性を持たせることができて、味方も敵もそれぞれ仲間思いなのだという終わり方になっている。このパターンがハンターハンターの特徴である。グリードアイランド編でもゴンたちは敵対していた爆弾魔のゲンスルーを倒した後は許して怪我を治療している。

主人公グループと敵グループの敵対と融和のパターンを人間と他の生物との大きな問題にしたのがキメラ=アント編である。人間は脅威である蟻を殲滅したくて、蟻は弱い人間を支配したくて、これは争いの規模が大きいだけに解決しにくい問題である。しかし蟻が人間だったころの記憶を思い出して、蟻の王はコムギと出会ったことで人間性を獲得して、蟻が人間性を持った一方で人間の凶暴さを暴くというジンテーゼになっていて、単に蟻を倒して終わるというだけの話になっていない。ヨークシン編とはまた違うアウフヘーベンのやり方で、命令のままに行動していた蟻が転生して人間性を持つというのは漫画ならではの面白さである。

暗黒大陸編はカキン国の国王と王子たちの家族内の対立にハンターたちが巻き込まれる形になっていて、クラピカは対立の当事者でなく冷静に護衛して平和的に儀式を終わらせようと調整しているだけで、その分感情的な葛藤がなくて盛り上がりに欠けている。王子の数が多すぎて人物像の掘り下げも不十分で、カキン王家の対立からクラピカのあだ討ちの物語にシフトしないと見せ場がない。しかしクラピカのあだ討ちのパターンはヨークシン編ですでにやっているので、別の落としどころを用意しないといけない。

●欠点もあるよ

・絵柄が変わる

連載が長い漫画にはよくあることだけれど連載中に絵が雑になったり絵柄が変わったりしていて、顔が別人のようになっている。漫画としてキャラクターを描いているからには一番特徴がでる顔はできるだけ統一して欲しい。クロロがいつのまにかひろゆきになってしまうと魅力がなくなる。ヨークシン編のゼパイルの食事の仕方がAKIRAの金田のオマージュだったり、アルカ編でホラー風展開にして伊藤潤二のオマージュをしたりするのは漫画によくあることなのでそれは別によい。しかしそこに労力を使うくらいならもっと丁寧に描くべき部分があるだろう。

・後付け設定の整合性

念能力というのは後付けの設定のようで、念能力の出始めのころはキャラクターの強さと念能力との整合性がとれていなくてちぐはぐになっている。
ヒソカは初登場時にはすでに念能力を使えるようで、天空闘技場で戦って幻影旅団に入って一人でクロロの相手をするくらい強いけれど、それだとハンター試験程度で傷を負うのはおかしい。ゾルディック家の執事たちは念能力を使えるのに、キルアが念能力を知らないのもおかしい。念を使えるようになりたてのクラピカがウヴォーギンに対して凝も使えるのかと上から目線で説明っぽいことを言っていたけれど、ビスケの修行でゴンが凝の訓練をしたように念能力者との戦闘では凝を使うのが当然なわけで、クラピカはちょっとおかしなことを言っている。幻影旅団がつわものぞろいの割にはノブナガの円の範囲がやたら狭くてゴンとキルアに逃げられているし、カキン第一王子私設兵のバビマイナの円の範囲のほうが広い。

・ご都合主義での復活

グリードアイランド編でゴンが腕を爆破されても大天使の息吹で一瞬で完全に治癒しているけれど、これはピトーの治癒能力以上の念能力ということになって、こういうことがほいほいできる念能力者の存在はパワーバランスを壊す。それからキメラ=アント編でピトーを倒すために無理やり大人になった反動で瀕死になったゴンはアルカの治癒能力で元の状態に戻る。無茶をしても後で治せるから大丈夫という大味な展開では、ハンターハンターの特徴である戦略性の面白さを損なうことになる。ご都合主義的な能力で超回復してしまうと医者を目指しているレオリオの無能さが際立つのもよくない。レオリオが念能力と寿命を引き換えにゴンを治すというくらいの制約を負わないと釣り合いがとれない。
死後に念能力が強まるという設定を利用してヒソカは死んだ後に自分に心臓マッサージをして復活して、爆発で足がなくなっても念能力で補ったけれど、死の定義はどうなのかという点に疑問が残る。ヒソカのやり方で念能力が強化できるなら、たとえば嘘喰いのハンカチ落としゲームみたいなのをやって心臓マッサージで臨死体験から復活するだけでお手軽に念能力を強化できることになってしまう。
ピトーに殺されたカイトは記憶を持ったまま転生していて、これではゴンの喪失感や復讐心はなんだったのかという話になる。転生したカイトはその後の物語ではまだ出番がなくて復活が蛇足気味になっている。ポックルとポンズは蟻に食べられても転生できなかったのに、ゴンと親しいカイトが転生して主人公の身内贔屓するのはよくない。

・ヒロインがいない

主人公のゴンとキルアは恋愛に興味がない子供で、クラピカは性別不明で、主要登場人物は恋愛方面での展開がない。パームがノヴに惚れているもののいかにも漫画的な大げさで猟奇的な恋愛になっているし、ヒソカは変態だし、スクワラとエリザの恋愛はほんのちょっと出てくるだけだし、恋愛に関連した面白さはない。念能力バトルと恋愛のかけひきの相性がわるいから恋愛方面は切り捨てているのかもしれないけれど、そのぶん登場人物の感情に深みがなくなる。

●暗黒大陸編はどうなるのか

暗黒大陸編までの主要登場人物の動機を整理してみると、以下のようになる。

・ゴン:ハンターになって父親のジンに会いたい。(解決済み)
・キルア:ゴンと友達になりたい、実家に監禁されていたアルカを守りたい。(解決済み)
・クラピカ:クルタ族を滅ぼした幻影旅団を倒して、仲間の目を取り返したい。(進行中)
・レオリオ:ハンターになって金を稼いで医者になりたい。(勉強中)
・ヒソカ:クロロとタイマンで戦いたい。(進行中)
・幻影旅団:ヒソカを殺したい。(進行中)
・ビヨンド:暗黒大陸に行きたい。(進行中)
・パリストン:暗黒大陸に行きたい。(進行中)
・ジン:パリストンの好き勝手にさせたくない。(進行中)
・カキン:王子を選別したい。(進行中)

ゴンとキルアは会長選挙・アルカ編で目的を達成していて、それ以上の動機がなくなったので物語から退場している。主人公がいなくなってもまだ物語が進むというのは珍しいことで、本来ならゴンがジンと会ったところで完結するのがきりがよいと思うけれど、人気作品をみすみす終わらせたくないという出版社の事情もあるのかもしれない。ゴンとキルアの代わりにまだ目的を果たしていないクラピカが暗黒大陸編の主人公にかわって、レオリオは動機を掘り下げてもしょうがないのでチョイ役でしか登場しなくなった。しかしビヨンドが暗黒大陸に行きたいだの十二支んがどうのこうのという展開は、初期メンバーから登場人物の大半が入れ替わって脇役が大勢出てきて各人物の掘り下げが浅くて感情移入できる人物がクラピカしかいなくなって、クラピカが鎖を使い分けて一人で何役もこなしているけれど、場面が単調になってそのぶん物語の面白さとしては後退している感じ。それにクラピカの念能力はすでに完成しているのでこれから努力で能力が伸びる余地がないし、個人的な復讐目的では仲間との友情も深めにくくて、努力友情勝利の王道パターンも使えなくて手詰まりっぽい展開になっている。
周りが敵だらけの王位継承戦の中でクラピカがどうやって第四王子から緋の目を取り返すのか、そして船内にいるヒソカと幻影旅団がどうなるか、暗黒大陸でビヨンドとジンとパリストンがどうなるのか今後の見所になる。暗黒大陸では未知の生物がうようよいて何が起きるかわからないというのは風呂敷を広げすぎていてうまく畳むのが難しそうだけれど、そこでキメラ=アント編以上のクライマックスをもってきてほしいものである。


HUNTER×HUNTER(1) (ジャンプコミックス) [ 冨樫義博 ]






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最終更新日  2021.09.28 21:17:52
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