わが家にうさぎがやってきた
突然のことだった。まるで、昨日の嵐のように。急に空が真っ暗になったかと思ったら、猛烈な風が吹いて、ひょうが落ちてきた。嵐が去って、買い物から家内と次女、三女が帰ってきた。興奮している。「ねえ、ねえ、お父さん。うさぎ飼っていいでしょ。かわいいんだから」「何だよ、突然」「今、カインズで見てきたの。かわいいの」もともと大きな目がもっと大きくなって真剣な表情で訴える。三女も、「お父さん、お父さん、いいでしょ」とまとわりついてくる。でも、一番、真剣だったのは家内だった。パソコンの前に座って、うさぎ情報を仕入れ始めた。留守番していた長女も、3人の勢いの押されて、「うさぎがほしい」と言い出した。そして、長女と次女は近くの図書館へ行って、うさぎの飼育の本を4冊も借りてきた。こいつら本気だ・・・。僕は、決して動物が嫌いというわけではない。むしろ、好きなのだけれども、世話をする自信がない。子どものころ、犬も飼ったし、はとも飼った。でも、上手に育てられなくて、死なせてしまったという辛い体験がある。だから、最初はかわいくて面倒みるだろうけど、そのうちあきてしまうのでは。それだけが危惧されることだ。僕が、返事を渋っていると、次女が泣き出した。「私、どこへも連れて行ってもらわなくてもいい。うさぎがいれば何もいらない」もう手がつけられない。仕方がない。もう一度、見に行くか。カインズへ出かけた。もうこの時点で、わが家にうさぎがくるのは決まったも同然だった。いつもは休みだと8時ごろまで寝ている娘たちが6時前に起き出してきた。そして、日曜日の朝はテレビに釘付けなのに、今朝はテレビの音がない。名前は「きき」。漢字にすると「氣氣」。新しい家族だ。たった1匹のうさぎだけど、何かわが家のエネルギーが大きく変化しそうな気配だ。