カテゴリ:誘水日記
上尾で「埼玉きんこんの会」が開かれた。
国学院大学の柴田先生の通訳で、言葉がうまく出せない人たちが、 自分の思いを伝え合うという会だ。 上尾で能力開発の教室を開いているほりあゆみさんが主催されている。 年に何度か、忙しい柴田先生のスケジュールに合わせて行われているが、 本当に心温まる会で、 毎回、参加させてもらっている。 今回の意見交換は、梅雨の時期ということで、 「あじさい」「でんでん虫」の話題から始まった。 きれいなうちにぱっと散っていく花もあるけど、 あじさいのように汚くなっても、懸命に生をまっとうしようとする生き方が、私は好きなんだという、 中学生の女の子の話。 でんでん虫は、ゆっくりゆっくりとしか動かないけれども、 彼らは、体全体で地面を抱え込み、地面の物語を味わいながら生きている。 そんな話もあった。初めて参加した中学生の女の子。 かたつむりという呼び方は、どこか後ろ向きな感じがするけど、でんでん虫は、前へ前へ出て行こうという積極的な感じが好きだと、中学生の男の子。 彼らの感性から出る言葉は、 心の中に自然に浸み込んでいいき、 温かなエネルギーを呼び起こしてくれる。 学校について話してくれたのはTちゃん。 彼は小学生だけど、ぼくは「師匠」と呼びたいくらいで、 彼の眼差し、言葉の一つひとつに、いつもはっとさせられている。 彼は、生まれたときから、自分で体が動かせないし、言葉を発することもできない。 ずっとストレッチャーに横になっている。 小学校では、普通のクラスへ通っているのだが、 自分がいることで、クラスの仲間や先生にさまざまな影響を与えているという話を、彼はしてくれた。 ほかの子とは明らかに違う状況の中で、Tちゃんは生きている。 見た目にもそれは明らかだし、 そういうTちゃんがいることで、みんな、自分って何だろう、友だちって何だろう、障がいって何だろうと、 自然に感じるようになってきているのだと思う。 嫌なことがあっても、 Tちゃんの姿を見ると、Tちゃんがあんなにがんばっているのだからと、 すっと思えるようになっている。 言葉を超えて、 Tちゃんがいるだけで感じさせてもらえるものがあるのだ。 ぼくは、きんこんの会に何度も出ているうち、 自分の中に幸せな気持ちがあふれてくるのを感じた。 あるとき、 氣歩と一緒に帰る途中、駅のホームで、 「なんか幸せだよね」 と、どちらからともなく言い始めた。 そのとき、 この幸福感は、どこかで味わったことがあると、記憶の中を探ってみた。 そしたら、 「あっ、イルカだ!」 と、思い当たった。 イルカと泳いで帰るとき、同じような幸せ感に満たされるのを思い出した。 ぼくは、それ以来、彼らのことを「陸に上がったイルカたち」と呼んでいる。 小笠原のきれいな海にぷかぷか浮かんでいると、 それだけで幸せになる。 でも、そこにイルカが登場すると、がらりと雰囲気が変わってしまう。 幸せが躍り出すというか、 自分のエネルギーが、一気に解放されていくのを感じる。 それと同じで、 ぼくたちが、心を開いて、彼らを理解したいという思いをもって、 友だちになりたいと近づいていくと、 そこには、イルカのエネルギーが生まれるのだ。 心が躍動する。 人は、 普通とか健常と呼ばれている平均的な人ばかりではない。 平均から外れる人もいて当たり前なのが自然の姿だ。 そういう人を差別し、排除しようとする力がずっと働いてきたし、 今でも働いているのが現状だ。 クラスに、自由に動けない、話しができないという子がいるのが、 本当は当たり前なのだ。 そんな中で、お互いが学び合っていくわけだ。 自然界は、多種多様な生命がいることで成り立っている。 それも、 支配とか援助とか虐待といった一方通行の関係ではなく、 複雑に絡み合って、完璧な循環を作っている。 今、世の中がおかしくなっているのは、 経済的生産性という基準だけで物事が判断されて、 障がいをもった人たちのように、生産性がないと思われる人たちは、 社会のお荷物だと見られてしまうような価値観を作り上げてしまったからだ。 しかし、 生産性を超えたところで、 彼らがどれだけの役割を果たしてくれているのか、 そこに目を向けないといけないと思う。 明治7年に学校制度ができた。 はっきりとした目的があった。 それは、 「軍事」と「産業」で欧米に追い付くために役立つ国民を作ることだった。 それが、現代日本には染みついている。 「軍事」も「産業」ももういいよ。 もっと大切なことがあるでしょう。 彼らの存在は、そういう思いを目覚めさせてくれる大きな力になるのではないだろうか。 雨の中、 いろんなことを考えながら帰って来た。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015年07月05日 07時29分29秒
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